研究課題
本研究では,偏光光散乱式粒子数計測器(以下偏光OPC)を山岳域に複数箇所設置し,また,地上の観測拠点とともに観測ネットワークを構築することにより,空間的時間的にスケールの大きな越境輸送微粒子のイベントを捉えることを目的にしている.本年度は,1)粒径区分範囲の細分化および組成毎に複素屈折率を設定することによる質量濃度の推定精度向上方法に関する検討,2)各地点に設置されたPOPCの器差を校正するために可搬型の標準粒子発生装置の開発および散乱理論との比較,3)夏期,富士山頂における観測の実施を行った.粒径区分範囲の細分化による質量濃度の推定誤差の軽減効果を検証した.ミー散乱理論に基づいてPSL粒子に対する粒径と散乱光強度の関係を算出し,ビン数を20として,新たな粒径区分を設定した.さらに人為起源粒子,鉱物粒子,海塩粒子それぞれに複素屈折率を仮定した場合の3成分の質量濃度の算出を行った.ネブライザーを用いて純水中に分散している標準粒子を噴霧させ,パーマピュアドライヤーにより乾燥させる標準粒子発生装置を開発した.運搬のために分解が可能である.粒径区分の細分化,および,組成毎に複素屈折率を考慮することにより,人為起源粒子の質量濃度は約3倍,鉱物粒子,海塩粒子は1.1倍増加した.同時に稼働していた大気エアロゾル化学成分連続自動分析装置の測定結果から硫酸アンモニウム粒子,硝酸アンモニウム粒子,そして有機エアロゾル粒子の濃度を推定し,これらの和とPOPCで測定した人為起源粒子の質量濃度と比較した.冬季はほぼ1:1の関係を示したが,5月,8月では,POPCの結果が低くなった.季節の違いによりエアロゾルの組成が異なったためと考えられる.POPCの光学系におけるPSL粒子のミー散乱理論から算出した粒径に対する偏光度の推定値と実測値を比較した.概ね一致することを確かめた.
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 備考 (1件)
Atmospheric Environment
巻: 159 ページ: 83-91
doi.org/10.1016/j.atmosenv.2017.03.044
http://popcarn.yamanashi.ac.jp/