本研究は草本系バイオマスのメタン発酵において、Ⅰ 反応槽内の撹拌を適度に抑えることにより、槽内に投入した固形物や微生物の不均一な分布をつくる、Ⅱ 水処理装置用担体を投入することにより、多種多様な微生物を高濃度に保持することで、処理の効率化を実現するシステムの構築を目標としている。 最終年度はこれまでの実験で最も処理効率が高かった低速(10rpm)で反応槽内を連続撹拌し、さらに水面に浮上する担体を投入することがメタン発酵に及ぼす影響を調べた。前年度同様、水理学的滞留時間(以下、HRTと略記)は8日とし、基質であるろ紙粉末を一日一回投入した。運転温度は従来通り35℃とした。また担体を投入しない反応槽において、HRTを8日から5日に短縮し、処理への影響を検討した。そして最後に反応槽内の菌叢を定量PCRと次世代シーケンシングで解析した。 実験の結果、担体投入はメタン生成量やセルロース分解率に影響を及ぼさなかった。一方、菌体など固形物濃度の指標であるVSSに関しては、担体投入により反応槽上層で上昇し、下層では大きく低下した。また菌叢解析の結果、担体投入により反応槽内の細菌群集構成に層間で違いが生じ、単位汚泥重量あたりの細菌数が増大することがわかった。さらにHRT短縮実験で、HRTを5日にすると反応槽下層でセルロースの蓄積が見られ、担体投入のない反応槽では良好な処理が困難になることが判明した。 以上、これまでの研究を総括すると、撹拌に関しては反応槽内が均一になる完全混合よりは、汚泥やセルロースが底部に沈降する程度の撹拌(今回は10rpm)がメタン発酵に有利であること、浮上性担体の投入はメタン発酵特性に大きな影響を及ぼさないが、菌叢レベルでの多様性が増し、細菌数も増大すること、HRT8日で良好なセルロースのメタン発酵(セルロース分解率79%以上)が可能であることが判明した。
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