平成29年度は貯水槽水道を対象とした末端給水栓のレジオネラ属細菌,宿主となりうる自由生活性アメーバ,アメーバの餌となる従属栄養細菌(HPC)といった各微生物による汚染実態調査を進めた。レジオネラ検出履歴のある給水栓を対象として1~2ヶ月間隔で採水を実施し,レジオネラ検出状況の推移を調べた結果,捨水による残留塩素濃度の回復の影響を受けて一度不検出となった給水栓でも,水の滞留が再度発生して残留塩素が一定レベルを下回ると,レジオネラが再検出される現象が確認された。この結果は,レジオネラが給水栓末端部で生きているが培養できない(VBNC)状態となって生息し続けている可能性を示すと考えられる。そのため,レジオネラ菌の存在評価に資するデータ集積を目的として,VBNC状態にあるレジオネラを直接的に評価可能なEMA(エチレンモノアザイド)-PCR法の条件検討に着手した。加熱操作により調製した死菌レジオネラ細胞懸濁液を用いて,特にPCRに先立つEMA処理条件を検討し,不活化効果が得られるEMA溶液添加量,ならびに処理回数を抽出した。 同時に,アメーバ汚染が進行しやすくなる水質条件についても詳細に検討した。昨年度の調査により,残留塩素濃度が0.4 mg/L以下においてアメーバ検出率が上昇することが判明しているが,その一方で残留塩素濃度とアメーバ濃度,水温とアメーバ汚染率,HPCとアメーバ濃度といった各因子間には明確な相関が見られなかった。アメーバの餌となるHPCが十分に抑制されていてもアメーバが度々検出された結果を踏まえて,HPCの測定法の妥当性を見直すこととし,培養期間の延長によるHPC濃度の変化を検討した。その結果,HPCは十分に低いにも関わらずアメーバ検出率が高かった遊離塩素0.1~0.3 mg/Lの領域では,培養期間延長(14日間)により大きくHPC濃度が上昇するケースが確認された。
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