研究課題/領域番号 |
15K06277
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
天野 耕二 立命館大学, 理工学部, 教授 (80167957)
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研究分担者 |
吉川 直樹 立命館大学, 理工学部, 助教 (10583271)
島田 幸司 立命館大学, 経済学部, 教授 (70367986)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー / 地理情報システム / マイクログリッド / 電力取引市場 |
研究実績の概要 |
電力取引シミュレーションに必要な基礎的工学データ・社会科学データの整備を進めた。工学的データでは、下記2点について既往研究、関連データを参考にデータを整備した。 1. 再生可能エネルギーの導入ポテンシャル:気象官署・アメダスレベルの過去の気象情報をもとに、地理情報システム(GIS)を用いたレベルでの太陽光発電・風力発電の発電量を推計した。また、マイクログリッド導入にかかる設備コストや投入資材量に関するデータを収集・整備した。 2. マイクログリッド・蓄電池の運転特性:マイクログリッドや個別施設に付属する蓄電池の充放電特性や送電ロスなど、設備運用に関するデータを収集した。 また、電力取引市場参加者の行動のモデル化に必要な社会科学的情報についても整備した。電力取引市場導入時、小口事業者は、自らの発電・需要状況と市場の需給状況が変動する中で、現在・将来の気象情報を加味して売電・買電や蓄電を行う。その行動によって電力価格は変動し、電力需給は一定のバランスに収束される。この条件のもとで、小口事業者は一定の判断基準により行動する。たとえば、安定性を重視し、蓄電量を一定以上確保する戦略、収益性を重視し買電額を差し引いた収入を最大化する戦略などが考えられる。電力取引シミュレーション実施のため、行動を数パターンに類型化するが、小口事業者がどの程度の割合で各類型に含まれうるかを把握する必要がある。そこで、模擬的な電力取引市場を設定し、十数名の被験者による予備的な経済実験を実施し、個人の行動パターンや行動基準など、シミュレーションに必要な行動に関わる情報を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地域ごとに異なる再生可能エネルギーの導入ポテンシャルや、マイクログリッド・蓄電池の運転特性などの工学的データと、設置者の行動基準や電力取引市場の取引形態といった社会科学的知見を計画通りに蓄積できている。さらに、先物取引やオプション取引を組み合わせた電力市場取引の導入形態についても検討する準備が始まっている。先物取引の導入の有無、市場取引の地理的範囲(全国・都道府県単位等)、系統電力事業者との関係等、様々なパターンを想定し、実現可能性や公平性等の観点から、候補となるべきいくつかの市場形態を探る段階に到達している。
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今後の研究の推進方策 |
過年度までに整備した基礎的データをもとに、電力市場取引導入のシミュレーションモデルを構築し、既存制度との比較評価や効率的な電力取引市場シミュレーションモデルの構築を試みる。個々の小口事業者の電力取引行動について定式化を行い、与えられた条件下(気象条件、小口事業者の行動基準)における市場価格や市場取引量、再生可能エネルギーの新規導入量等の市場変動をシミュレーション分析する。はじめは狭い地域を対象として、行動が限定的で検証が容易なモデルを構築し、モデルの挙動を確認しつつ、より複雑な広域的モデルへ近づける。一方で、各種データの信頼性確保のため、データ検証や追加的な分析・実験を行う。また、コストや環境負荷等の、電力システムの評価指標についても、既存の公共事業の評価手法やライフサイクルアセスメント(LCA)等の文献調査やヒアリング調査をもとに、安定性・効率性・環境負荷の観点から検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
電力取引市場を想定した経済実験について、実験システムの実証性を慎重に進めるため、謝金を要しない予備的実験に留めておいたことから、当初予定していた経済実験謝金の執行を翌年度に繰り越すことを判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
電力取引市場を想定した経済実験について、謝金を伴う経済行動実験を進めることから、経済実験謝金の執行に使用する。
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