研究課題/領域番号 |
15K06289
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
磯 雅人 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (60377471)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 耐震補強 / 既存袖壁付きRC柱 / 増厚補強構法 / ポリビニルアルコール繊維補強吹付けモルタル / 住みながら / 補強設計 / 強度 / 靭性 |
研究実績の概要 |
現在,地震の活動期にあり,耐震性能が不足する建物(既存不適格建物)の補強が急務となっている。開発対象とする既存鉄筋コンクリート(以下,RC)造のマンションは,桁行(開口側)方向の耐震性能が不足するケースが多い。そのため,従来行われているRC増設耐震壁やK型ブレースを入れることは,採光の確保ならびに使用上の観点から困難であり,居住者の理解も得難い。 そこで本研究では,既存袖壁付きRC柱にポリビニルアルコール繊維補強モルタル(以下,PVA-FRM)を外部から吹付けて,増厚し,住みながら耐震補強できる革新的な補強構法(以下,PVA-FRM吹付け増厚補強構法)を開発する。同時に構造実験により,その構造性能を明らかにし,その補強設計法を開発・提案することを目的とした。 平成28年度に実施した内容は,第2シリーズの実験計画,試験体製作,実験準備である。基準となる既存袖壁付きRC柱の断面は,袖壁が柱の両側に均等に配置された袖壁付きRC柱であり,柱の面合わせで袖壁が接続されている。柱断面は300×300mm,柱の内法長さ700mm,柱の両側に配置される袖壁の張出長さは300mm,袖壁厚さは50mmである。また,柱の柱頭・柱脚には梁形b×D=200×250mmがついている。スケールは実大の約1/2スケールを想定した。既存部の帯筋比pw,壁横筋比pshは,それぞれ0.12%,0.35%とし,現行基準には満たない既存不適格の袖壁付きRC柱を想定した。コンクリートの設計基準強度Fcは24N/mm2とした。試験体の変動要因は補強の有無である。補強有りの試験体は,補強無しの試験体の袖壁部および梁形に壁横筋をD10(SD295A)@100またはD13(SD295A)@100を配置した。さらに,既存の袖壁,梁形と増厚補強部との一体化を図るためにアンカー筋が配置され,その後にPVA-FRMを60mm打設して,増厚補強している。以上,試験体総数は計3体であり,平成28年度は試験体製作まで完了させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は,既存袖壁付きRC柱にPVA-FRMを外部から吹付けて増厚し,住民が住みながら耐震補強できる構法(以下,PVA-FRM吹付け増厚補強構法)を開発することである。平成27年度の部材実験の成果から,さらにせん断耐力の増加を見込める補強方法のアイデアが示されたことから,平成28年度では,それを模擬した補強実験を行い,そのせん断補強効果を明らかにすることを目的とした。その補強工法のアイデアは,既存部の圧縮側袖壁も同時に増厚し,圧縮断面を増加させ,そこに伝わるせん断力を梁側面に打ち込んだアンカー筋を介して,既存躯体に流すというものである。 平成28年度の進捗状況であるが,そのアイデアを盛り込んだPVA-FRM吹付け増厚補強された袖壁付き柱試験体3体の試験体製作および加力フレームの組み替えは,すでに終了している。5月後半から実験を開始し,6月中に実験を終了させる予定である。本来であれば,この実験は平成28年度中に終わらせる予定であったが,試験体形状の大きな変更により,実験計画がやや遅れ,実験を終了させることができなかった。以上より,本研究は「やや遅れている。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の当初の計画では,平成27,28年度に実施した曲げせん断実験のデータをさらに分析・検討し,PVA-FRM吹付け増厚補強構法により補強された袖壁付きRC柱部材の曲げ耐力,せん断耐力,変形性能の評価方法を提案し,その補強設計法をまとめることであった。しかし,平成28年度の実験が遅れたことから,平成29年度では,先ず6月中に実験を終了させ,その結果と平成27年度の結果を含めて分析・検討を行い,本補強工法の設計法を提案する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度に実験を行う予定であったが,試験体の計画変更により実験が遅延した。そのため,H28年度に行う予定であった実験をH29年度に行うこととした。 以上のことから,H28年度に使用予定であった実験費用を一部,使用しなかった。そのため,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度の実験を行うのに必要な消耗品に使用する計画である。
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