長周期地震として知られる1985年メキシコ地震において被災した14階建鉄筋コンクリート(RC)造集合住宅の倒壊に至る機構について,(1)棟間衝突のモデル化にあたり,解析上・設計上敏感な影響を及ぼす反発係数の定量化をはかるため,追加の衝突実験を行った。また(2)この追加実験と前年度までの成果を反映した3棟連棟の全体架構有限要素モデルを作詞し,その解析結果に基づきヌエボ・レオン棟の倒壊原因を定量的に評価した。 (1)追加衝突実験については,衝突部の設計詳細をより実構造物の状況に近づけた架構試験体および載荷装置を製作した。すなわち前年度には鋼製落下錘をやはり鋼製ロードセルに衝突させる形で実施していた,これに対し本年度は落下錘とロードセルにコンクリート系緩衝ブロックを組み込み,より実状に近い反発係数と定量化と構成モデルの最適化を行った。この追加実験は,前度と同様に残留性能を定量化し,かつ有限要素解析による衝突部モデル化の確認を行っている。この際,架構の剛性・減衰に加えて緩衝ブロックの影響を考慮した見かけの反発係数を実験的に得たことにより,衝突構成モデルの剛性と粘性の定量化により高い信頼性が得られた。 (2)3棟連棟のヌエボ・レオン棟全体架構有限要素モデルについて,竣工時から地震発生時までの23年間におよぶコンクリートの乾燥収縮ひび割れを再現し,かつこの23年に生じたと推定される地盤の不同沈下も再現したうえで,地震応答解析を実施したる。この解析によって,ヌエボ・レオン棟の倒壊原因を工学的に十分な客観性をもって評価した。
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