研究課題/領域番号 |
15K06293
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
辻 聖晃 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00243121)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 耐震補強 / 木造住宅 / オイルダンパー / 連結制震 / 振動台実験 / 床の面内剛性 / 鋼製独立柱 / 連続地震動 |
研究実績の概要 |
木造住宅の内部に鋼製独立柱を設置し,これと木造住宅の2階床面をオイルダンパーで連結することにより,木造住宅の耐震性能を向上させる構法について,以下の研究を実施した. (1)耐震性能が不足している木造住宅の大部分を占める2階建て木造住宅について,提案する連結制震型耐震補強構法と,2階への一般的な構法(耐震壁の付加など)による耐震補強を併用するときの,連結オイルダンパーの容量(減衰係数),独立鋼製柱の本数(剛性)および2階への補強量(付加する耐力)が,耐震補強効果に与える影響の傾向を,数値解析的な検討から明らかにした. (2)上記の検討に基づき,連結オイルダンパーの容量,独立鋼製柱の本数および2階への補強量の設計フローを構築した.また,実在する木造住宅を元に作成した建物例に対して,構築した設計フローに基づいて耐震補強設計を実施し,設計フローの有効性を確認した. (3)2016年4月に発生した熊本地震のような,震度6~7の大地震が短期間に連続して発生する地震動(連続地震動)に対して,木造住宅の地震時最大応答が地震動の作用回数ごとに増大する現象が,エネルギーの収支に基づいて説明できることを明らかにした.また,本課題で提案する連結制震型耐震補強構法を適用した場合には,連続地震動に対する地震動の作用回数ごとの最大応答の増大現象が,大幅に抑制できることを示した.さらに,木造住宅の復元力特性を模擬できるような工夫を施した鋼製小型模型を作成して,連続地震動に対する最大応答の増幅現象が振動台実験により再現できることを示した. (4)前年度の研究で明らかにした,提案する耐震補強構法の性能に木造住宅の床面内剛性が与える影響について,等価Voigt要素を用いた簡略化モデルに対する理論的な検討により説明できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の平成28年度の研究計画では,鋼製独立柱の柱脚の固定度の影響を検討することとしていたが,熊本地震における木造住宅の被害状況から,連続地震動に対する木造住宅の耐震性能の解明が喫緊の課題であると判断し,研究内容を一部変更した.このため,鋼製独立柱の柱脚の固定度の影響についての研究は実施できなかった.それ以外については,目標とする成果を達成することができたため,「おおむね順調」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,以下の研究を実施する予定である. (1)平成28年度の積み残し課題となっている,鋼製柱の柱脚の固定度が本耐震補強構法の性能に与える影響の定量的評価と,固定度の評価方法の確立. (2)骨組モデルに対する数値解析を通じた本耐震補強構法の性能検証. (3)実建物への適用を前提とした,耐震補強要素(オイルダンパーおよび鋼製独立柱)の施工方法および取り付け詳細の検討.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた実験について,(1)連続地震動に対する木造住宅の耐震性能の解明を優先課題としたため,鋼製独立柱の柱脚固定度が本耐震補強構法の性能に与える影響を検討するための実験を実施できなかった,(2)振動台実験を,コストと作成時間を要する木製模型から,コストと作成時間を節約でき,かつ,再利用も可能な鋼製模型(木造建物の復元力特性を模擬するため,一部に木材を使用)に変更した,ことにより,当初の予定よりも使用額が減少した.
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に実施できなかった,鋼製独立柱の柱脚固定度が本耐震補強構法の性能に与える影響を検討するための実験を実施する.また,耐震補強要素の施工方法および取り付け詳細の検討のための模型作成にも使用する.
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