研究課題/領域番号 |
15K06295
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
田中 剛 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90243328)
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研究分担者 |
浅田 勇人 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70620798)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 鋼構造 / 埋込み柱脚 / 外柱柱脚 / 構造実験 / パンチングシヤー破壊 / 埋込み深さ / U字筋補強 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,鋼構造埋込み柱脚を対象に,柱脚の耐震設計法および耐震補強技術を実験的な検証と骨組地震応答解析の結果を踏まえて確立しようとするものである。平成27年度では,耐力評価法の確立していない外柱柱脚のパンチングシヤー破壊を対象とした構造実験を実施した。構造実験に供した試験体は,角形鋼管柱と基礎鉄筋コンクリート梁から成るL字形架構である。柱には冷間プレス成形角形鋼管(□-150x150x12(STKR400)),基礎梁には梁せい500mm,梁幅350mmの鉄筋コンクリート梁を用いて,合計6体の試験体を製作した。実験因子は,埋込み深さおよびU字筋による補強詳細である。埋込み深さは,柱せいの2倍となる300mmおよび3倍となる450mmの2種類を用意した。U字筋による補強詳細については,補強無しの場合およびU字筋と柱との距離を23mm,94mm,165mmと変化させた場合の4種類を用意した。U字筋と柱との距離を23mmとした試験体を除き,パンチングシャー破壊が生じ,最大荷重が決定した。U字筋と柱との距離を23mmとした試験体では,柱フェース付近に生じた縦方向のひび割れが進展し最大荷重が決定した。 実験結果より,以下の知見が得られた。 (1) 埋込み深さが大きくなるに従い最大荷重は上昇する。 (2) U字筋と柱との距離が大きくなるに従い最大荷重は上昇する。 U字筋に貼付した歪ゲージより鉄筋軸力を算定し,最大荷重時のU字筋の負担分および前面コンクリートの負担分を計算した。U字筋と柱との距離を23mmとした試験体では,U字筋が荷重のほとんどを負担している。その他の試験体では,前面コンクリートの負担分については,U字筋と柱との距離に依存せず,概ね一定値となったが,U字筋の負担分については,U字筋と柱との距離が大きいほどU字筋の負担分が大きくなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度では,当初の計画通り,角形鋼管柱と基礎鉄筋コンクリート梁から成るL字形架構試験体を用いて,埋込み外柱柱脚に生じるパンチングシヤー破壊耐力に関する系統的な実験資料を蓄積した。最大荷重時における鉄筋および前面コンクリートの荷重負担分に関するデータが得られている。また,埋込み柱脚部における応力伝達機構に関するデータも得られつつある。現在,U字筋と角形鋼管の間に形成される圧縮ストラットに基づく耐力評価法の検討を行っている。耐力評価は,極限解析の上界定理に基づく。コンクリートの破壊基準には,修正Mohr-Coulombの破壊基準を用いる。U字筋と角形鋼管の間に破壊線を仮定し,破壊線における内力仕事と支圧力による外力仕事を等しいとおくことにより,パンチングシヤー破壊耐力を求める。 本実験に先立って実施した平成26年度の自主研究では,埋込み深さおよびU字筋の補強筋量を実験因子とした試験体5体の実験結果が得られている。これらの実験結果と併せて検討することにより,普遍性のある耐力評価法を確立する予定である。 実験と並行して,中低層建物および工場建屋を対象とした鉄骨造建物の骨組モデルを作成し,柱脚を埋込み柱脚とした場合と露出柱脚とした場合の2種類について,静的弾塑性解析を実施し,両者の剛性および保有水平耐力に関する基礎的な情報を得た。露出柱脚では,柱脚を回転バネによりモデル化し,アンカーボルトの塑性化により曲げ耐力が決定するように設定した。一方,埋込み柱脚では,基礎梁天端から柱せいの1.5倍の位置を固定とし,鋼柱側に塑性ヒンジが形成されるように設定した。今後,骨組地震応答解析および津波荷重に対する解析を行い,柱脚の耐震設計法の確立に繋げる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度では,鋼構造埋込み柱脚の外柱柱脚に生じるパンチングシャー破壊耐力を調べるための実験を行った。試験体は,冷間成形角形鋼管柱と基礎鉄筋コンクリート梁から成るもので,基礎梁には梁主筋とあばら筋だけを配筋し,柱型主筋および帯筋は配筋していない。 平成28年度では,柱型主筋および帯筋を配筋した試験体を製作し,帯筋による補強効果を検討する。実験因子は,以下のものを考えている。 (1) 埋込み深さ:柱せいの2倍および3倍の2種類,(2) U字筋による補強の有無:補強無しと補強有りの2種類,(3) 柱型の帯筋量:帯筋量小と帯筋量大の2種類 これらの実験因子に対して,8体のL字形試験体を製作し,載荷実験を計画している。鋼柱には,□-150×150×12(STKR490)を使用し,幅170mm,せい170mm,板厚12mmの正方形のベースプレートを取り付ける。梁主筋およびU字筋にはD-19(SD345)を使用し,あばら筋にはD-10(SD295A)を使用する。柱型主筋にはD-16(SD345)を使用し,帯筋にはD-10(SD295A)を使用する。基礎コンクリートの設計規準強度はFc=24(MPa)とする。載荷は,正負交番繰返し載荷とし,層間変形角1/400radを正負1回ずつ,1/200rad,1/100rad,2/100radおよび3/100radを各正負2回ずつ載荷し,その後は正方向に単調載荷する。得られた実験結果より,パンチングシャー破壊耐力に与える柱型帯筋の影響を検討し,耐力評価法を提示する予定である。 実験と並行して,前年度に作成した骨組モデルを用いて,地震応答解析および津波荷重を作用させた解析を行い,柱脚の履歴挙動を調べるとともに,柱脚の構造性能が骨組の応答性状に与える影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本申請研究では,予算の大半を試験体製作費,歪ゲージ購入費,素材試験費等の実験費用に充てている。平成27年度の当初計画では,これらの実験費用として,直接経費185万円のうち,20万円/1体×8体=160万円を計画していた。当初計画に対して直接経費が140万円に減額されたため,実験費用を可能な限り抑えたが,約18万円/1体は必要となった。これより,試験体数として,最大7体が可能となったが,実験因子を考慮すると,平成27年度に6体分を実施し,1体分を次年度に送り平成28年度に8体分を実施した方が,研究成果に直結する実験結果が得られると判断し,1体分の実験費用を残した。
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次年度使用額の使用計画 |
本申請研究では,予算の大半を試験体製作費,歪ゲージ購入費,素材試験費等の実験費用に充てている。平成28年度の当初計画では,これらの実験費用として,直接経費185万円のうち,20万円/1体×8体=160万円を計画していた。直接経費が140万円に減額され,前年度からの繰越金が約18万円で,使用できる金額の合計は,約158万円となる。従って,平成28年度では,当初計画通り8体の実験を実施する予定で,18万円/1体(前年度実績)×8体=144万円を計画している。
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