本研究では、耐震設計規定を含む許容応力度設計および保有水平耐力の制約条件下の鋼材量最小化手法を応用した鋼構造建物の優良構造設計解導出手法を提示し、耐震架構配置に応じた優良設計解同士を経済性と弾塑性耐震性能の両面から定量的に比較分析した。鋼構造建物の耐震架構配置は柱梁接合方式の組み合わせによって決定され、それによって柱の断面形状も変化する。単純な柱梁接合方法を多用した経済的で十分な耐震性能を備えた鋼構造建物の構造設計の可能性を探求した。 標準設計された鋼構造事務所建物の耐震架構配置に着目し、ほぼ全ての柱梁接合部を曲げモーメントを伝達する剛接合として全体を耐震架構とする設計(全体型)と外周に耐震架構を限定する設計(集約型)を比較した。全体型では柱を角形鋼管、集約型では角形鋼管とした場合とH形鋼とした場合の両方を評価した。両型式の建物の骨組に対して、部材断面寸法を設計変数とし、許容応力度設計と必要保有水平耐力の条件を満足させることを制約条件とした鋼材量最小化を行った。部材断面の大きさと板厚を設計変数として、それらの規格寸法を設計領域とする離散化設計変数に対する最適解を多点スタート局所探索(MSLS)により得た。両型式の優良設計解同士を比較して、耐震架構配置が鋼構造事務所建物の構造性状に及ぼす影響を比較分析した。全体型の方が集約型よりも鋼材量が多かった。保有水平耐力は全体型の方が高い傾向となったが、保有水平耐力が同等になるような優良設計解同士の比較でも集約型の鋼材量が少ないことを確認した。
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