実験データと既往の研究および解析を総括することとなっていた. 普通強度の鋼管ならびに高強度コンクリートを用いた実験結果の検討を行い,解析的研究により,CFT柱の耐力評価ならびに剛性評価の検討を行った. 軸力比,座屈長さ・断面せい比,振幅を実験変数とした実験資料から,各実験変数の影響を明らかにした.回帰分析により,基本となる普通強度の鋼材を用いた場合の耐力劣化性状と繰り返し回数の関係を導き出した. 解析は,疲労を評価する上で前提となる終局耐力について,高強度鋼材,コンクリートも解析変数として,検討を行い,全塑性モーメントを発揮できる解析変数を明らかにした. また,長周期地震動を受ける柱材を設計するのに不可欠である,短期許容耐力と変形の関係について検討を行った.CFT柱が短期許容耐力に達した時,コンクリートが降伏した状態であることは既往の研究より明らかになっていたが,鋼管については不明であった.そこで,座屈長さ・断面せい比,軸力比,鋼管の幅厚比,を解析変数として,許容耐力時の鋼管の応力状態について解析変数の影響を明らかにした.高強度鋼材を用いたときに着目すると,降伏応力度が440N/mm2の場合は,座屈長さ・断面せい比が4の場合は,短期許容耐力時に鋼管は降伏し,10の場合は,軸力比が0.2,0.3のときは鋼管が降伏し,部材角も1/200以上となっており変形量も大きい.降伏応力度が700N/mm2の場合は,許容耐力時に鋼管が降伏している場合はなく,普通強度を用いたときよりも鋼管降伏時の耐力が大きくなっていることがわかった.しかしながら,座屈長さ・断面せい比が10,16のように大きくなると部材角は1/200以上となり,降伏はしていないが変形は過大となっていた.剛性については鋼管降伏が先行する場合に着目すると,鋼管降伏時と比較し許容耐力時の接線剛性は最大21%低下していた.
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