本研究では、格子状骨組で構成した耐震壁が地震時に受ける繰り返しせん断力に対する耐力、座屈特性を実験と解析で明らかにした上で、耐力や剛性など基本的な特性の定量的な評価方法を構築した。 2017年度においては、2015年度に実施した単層六角形格子鋼板耐震壁の繰り返しせん断実験および、2016年度に実施した複層立体トラス耐震壁の実験結果について、有限要素解析を併用して非弾性座屈特性を分析し論文化した。また複層立体トラス実験で観察された座屈の集中を回避する一つの方法として、座屈に先行して接合部を降伏させる部材の実験を試験的に実施した。 単層格子耐震壁の研究では、六角形格子が面外座屈を生じにくい曲げ支配型の特性を有するものの、塑性化後に縦材に生じる曲げヒンジの回転角がせん断変形角の2倍以上に増幅されることを連続体置換法の枠組を利用して理論的にも示し、実験における面外座屈の生じにくさと縦材に生じた亀裂、破断の原因が説明できた。また、せん断パネルダンパーにおける面外座屈が生じる変形角の推定方法を援用し、線形座屈解析で得る正規化細長比の関数で座屈変形角が評価できることを示した。ここでは2012年度に実施した三角形格子耐震壁の実験結果も参照している。 複層立体トラス耐震壁の研究では、直接地震力を負担する外弦材を主応力方向に45度傾け斜交グリッドとした立体トラス平板について部材の偏心接合と接合部の剛性を考慮した剛性、耐力評価法を検討した。トラス平板のせん断弾性剛性は部材の偏心を考慮した理論解と実験結果が良好に一致した。線形座屈解析で得る座屈長さとそこから算定する座屈耐力は、複層の試験体については良好に一致したが比較のため実施した単層試験体については過小評価となった。また、通常の四角錘体立体トラスの耐震壁について、数値解析により動的な連鎖座屈の生じる崩壊機構を明らかにし崩壊加速度の評価を実施した。
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