研究課題/領域番号 |
15K06310
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
山田 和夫 愛知工業大学, 工学部, 教授 (10093080)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コンクリート / 検査・診断 / 弾性波法 / 電磁波法 / コンファインドコンクリート / 支圧強度 / 外側耐震補強 / 乾式工法 |
研究実績の概要 |
1.既存コンクリート造建築物の検査・診断方法に関する検討:(1)弾性波法による検査・診断方法の研究では、弾性波の入力・検出を非接触で行う空中超音波法は、仕上げ材があっても厚さが85mmまでのコンクリートであれば内部探査が可能であるが、骨材寸法が大きくなると推定精度が低下すること、非接触型振動計で検出した衝撃弾性波は、約10kHz以下の周波数領域であれば、在来の接触型加速度計で検出した場合と同様の周波数特性が得られ、コンクリートの内部探査に適用可能であることがわかった。(2)電磁波法による検査・診断法の研究では、逆解析を適用した赤外線サーモグラフィー法による内部探査結果に及ぼす風速・風向の影響について調査を行った結果、風速・風向と熱伝達率との関係を用いれば精度の良いコンクリートの内部探査が可能であることがわかった。 2.既存コンクリート造建築物の耐震補強方法に関する検討:(1)横拘束を受けるコンクリートの支圧特性の研究では、鋼繊維によって内的横拘束を受けるコンクリートの支圧強度と支圧径との関係に及ぼす骨材寸法、母材強度および鋼繊維体積混入率の影響は、これらの相互作用の影響を考慮に入れた支圧強度推定式を用いることで精度良く評価できること、支圧載荷時の同一軸変位時の荷重は、鋼繊維による多軸効果と支圧部側面で生じるせん断抵抗による荷重成分の和として評価できることがわかった。(2)繊維補強プラスチックパネルによる住宅基礎ばりの外側耐震補強工法の研究では、密度が0.74g/cm3で厚さが20mmの補強パネルは、1枚貼りでも過剰補強となること、密度が0.50g/cm3で厚さが20mmの補強パネルは、無筋住宅基礎ばりに補強パネル2枚をエポキシ系接着剤とM10アンカーで接合させた場合、現仕様RC住宅基礎ばりの約2倍の耐力が得られ、優れた耐荷性能と補強効果が達成できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.既存コンクリート造建築物の検査・診断方法に関する検討:既存コンクリート造建築物の変状に対する定量的な評価方法の確立を目的とした研究のうち、空中超音波法に関しては、骨材寸法が大きくなるに従って推定精度は若干低下するが、コンクリート表面に石膏ボード等の仕上げ材が貼られている場合であっても全体厚さが85mmまでの範囲では、コンクリートの内部探査が可能であること、高エネルギーの弾性波入力が可能な衝撃弾性波法においては、本研究で採用した高感度非接触型振動計を検出器として使用した場合であっても、約10kHz以下の周波数成分に着目することによって、従来から用いられている接触型ピックアップと同等の内部評価が可能であることが確認でき、衝撃弾性波法の適用範囲が飛躍的に向上する可能性のあることがわかった。 2.既存コンクリート造建築物の耐震補強方法に関する検討:横拘束を受けるコンクリートの支圧特性に関する研究については、鋼繊維によって内的横拘束を受けるコンファインドコンクリートの支圧特性に及ぼす骨材寸法、鋼繊維混入量およびそれらの相互作用の影響について調査を行い、支圧強度推定式の定式化を行うとともに、支圧荷重を受ける鋼繊維補強コンクリートの変形特性に及ぼす鋼繊維の影響に対する解析的な取扱い方法について検討を行い、鋼繊維の混入によって増大するせん断抵抗成分の効果をモデル化した解析モデルの妥当性が確認できた。また、無筋住宅基礎ばりの耐震補強方法に関しては、繊維補強プラスチックパネルを使用した乾式工法による外側耐震補強方法を実用化するための基礎的研究として、適用可能な繊維補強プラスチックパネルの選定を行うととともに、その適用性について検討を行い、現規準仕様のRC住宅基礎ばり以上の性能のあることがわかった。 以上のように、上記2種類の研究テーマに関する過去2年間の研究目標は、何れもほぼ達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
1.既存コンクリート造建築物の検査・診断方法に関する検討:平成27および28年度では、厚さが100mmまでのコンクリートや仕上げ材を有するコンクリートを対象として空中超音波法による内部探査の推定精度について検討を行ったが、最終年度の平成29年度では、試験方法の実用化を目指して測定結果の視覚化と評価方法について一連の検討を行う。また、赤外線サーモグラフィー法については、平成28年度までの研究において、逆解析による推定結果に及ぼす内的および外的熱特性の影響につい調査を行い、それらの考慮の仕方について検討を行ったが、平成29年度では、更に定常熱伝導逆解析を適用した内部探査方法について検討を行い、赤外線サーモグラフィー法による定量的な内部探査方法の確立を目指す。 2.既存コンクリート造建築物の耐震補強方法に関する検討:横拘束を受けるコンクリートの支圧特性については、平成27および28年度では、鋼繊維によって内的横拘束を受ける各種コンファインドコンクリートの支圧特性の調査、並びに鋼繊維による横拘束効果を等価な鋼管・帯筋による外的拘束として評価する場合に必要となる等価横補強比について検討を行ったが、平成29年度では、鋼管および帯筋による外的横拘束と鋼繊維による内的横拘束を統一的に考慮できる評価方法について検討を行う。また、無筋住宅基礎ばりの耐震補強方法に関しては、研究業績の概要で述べたように、平成27年度では、主筋が内在する補強モルタルパネルによる外側耐震補強方法、平成28年度では、引張特性に優れている繊維補強プラスチックパネルによる外側耐震補強の適用性について検討を行ったが、最終年度の平成29年度では、これらの外側耐震補強パネルと既存無筋住宅基礎ばりとの合理的な接合方法について検討を行い、補強モルタルパネルおよび繊維補強プラスチックパネルによる外側耐震補強工法の実用化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27および28年度では、弾性波法を適用した検査・診断方法に関する研究で必要な非接触型検出器(スーパー感度レーザードップラ振動計)と多チャンネル同時計測が可能なメモリーハイコーダを購入して一連の実験的検討を行い、有用な成果を得ることができたが、計測および試験体の作製に必要であったひずみゲージや型枠および材料などの消耗品については現有のものが使用でき、また空中超音波試験の自動化についても、現有の装置で半自動計測が可能となったため、当初の計画と比較して支出を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
前述した外側耐震補強パネルと既存無筋住宅基礎ばりとの接合方法に関する検討を除けば、平成28年度までの一連の研究によって当初計画していた基礎的検討はほぼ終了しているため、最終年度の平成29年度は、各研究テーマにおいて再検討が必要となった場合の追加実験、並びに外側耐震補強パネルと既存無筋住宅基礎ばりとを接合する際に必要となる各種の消耗品を購入して一連の実験的検討を行う。
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