1.既存コンクリート造建築物の検査・診断方法に関する検討:(1)弾性波法による検査・診断方法の研究では、新たに試作した2次元自動走査型空中超音波測定装置を用いて一連の検討を行った。その結果、内部探査の評価指標として検出超音波の相対振幅自乗平均値と平均伝搬速度の自乗積を用いることによって、これらを単独で用いた場合の評価指標の欠点を相互に相殺できる利点を有し、内部探査精度が向上することが明らかとなった。(2)電磁波法による検査・診断法の研究では、1次元非定常熱伝導実験によって算定した熱拡散率を用いることにより、コンクリート内部の熱伝導特性に及ぼす各種調合要因および乾湿の影響を合理的に説明できること、これらの熱拡散率の測定結果を本研究で提案した逆解析手法に用いることにより、赤外線サーモグラフィー法による定量的な内部探査が可能となること、などが明らかとなった。 2.既存コンクリート造建築物の耐震補強方法に関する検討:(1)横拘束を受けるコンクリートの支圧特性の研究では、鋼繊維によって内的拘束を受ける鋼繊維補強コンクリートの支圧特性の解明を目的として、一連の検討を行った。その結果、鋼繊維補強コンクリートの支圧強度は、骨材寸法と鋼繊維長さの相互作用の影響を考慮することで精度良く評価でき、その耐荷性能は、鋼繊維による多軸効果成分と支圧部側面のせん断抵抗成分とに分類できること、などが明らかとなった。(2)繊維補強プラスチックパネルによる住宅基礎ばりの外側耐震補強工法の研究では、厚さが20mmの補強パネル2枚をエポキシ系接着剤とM10アンカーで住宅基礎ばりに接合させる乾式外側補強工法について一連の検討を行った。その結果、アンカーボルトの本数や設置方法に関わらず補強パネルによる斜め引張せん断ひび割れの拡大抑制効果が認められ、最大耐力後の耐荷能力も優れた性能を有すること、など有用な結果が得られた。
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