本研究は,建築物の天井脱落事故を未然に防ぐための安全性能評価システムの構築と,適用規模に応じた新しい吊り天井構造を開発することを目的として実施したものである。 安全性能評価システムには,無線技術によるMEMS高感度三軸加速度計を用い,既存の吊り天井構造において,振れ止めブレース等の耐震部材が想定通り適切な配置で施工されているかを定量的に検査するシステムの開発を行った。また,天井ふところが3mを超える大型の天井構造を対象とした特殊加工軽量形鋼による新しい天井構造を提案し,実験によりその耐震性を検討した。 H27年度は提案する軽量角形鋼管による天井構造システムにおいて,水平加力実験により,鉛直補強材の効果および耐力特性を把握した。また,逆ハとV字ブレース配置に対する耐力特性を確認し,天井ふところが3.5mを超える場合の仕様として,2段ブレースの仕様を提案し,1段ブレースと2段ブレースの耐力特性を確認した。 H28年度は天井構造におけるブレース材をコンクリートスラブ等の指定された位置に取り付けるための接合金物を提案し,斜め加力に対する接合部要素実験を実施し,その耐力特性を確認した。また,衝撃加振加速度記録による非破壊検査方法について検討を行い,その特性を調査した。 最終H29年度には実構造物における天井構造の基礎的な振動特性を把握する目的で,吊り天井を撤去して直天井としたウェーブ天井ホールの改修事例における天井構造の振動特性について調査を行い,数値解析モデルによる周波数応答,時刻歴応答解析を実施し,計測システムの特性と天井改修工事の有効性を確認した。
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