研究課題/領域番号 |
15K06315
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研究機関 | 第一工業大学 |
研究代表者 |
古田 智基 第一工業大学, 工学部, 教授 (50311056)
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研究分担者 |
中尾 方人 横浜国立大学, その他の研究科, 助教 (60323937)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高減衰ゴム / 制震構造 / 滑り接合部 / K型筋かい / 在来軸組構法 / 等価粘性減衰定数 |
研究実績の概要 |
耐力壁の耐力を向上させるに連れて軸組に対する引き抜きの力が生じ、軸組の柱脚やデバイスと軸組との接合部が破壊する,デバイス自体が座屈する,建物全体が偏心しやすくなる,など想定外の破壊が起こる可能性があるため、これまでの研究により壁倍率7.0を限界と考え、壁倍率の目標値を7.0とした。目標壁倍率7.0を確保するための軸組の荷重-変位関係を、これまでの研究から初期剛性を約3倍に、変形性能を2倍にすることで可能となることを導き、高減衰ゴムと摩擦材の特性により目標バイリニアを設定し、これを目標スペックとした。 ダンパーは大小2つの鋼管を入れ子にし、その間のスペースに高減衰ゴムを充填したものであり、外筒と内筒の長さ方向に相対変位が生じると高減衰ゴムにせん断ひずみが生じて剛性および減衰力を発生する。高減衰ゴムは、せん断ひずみが100%程度以上になるとハードニングが生じて減衰力が低下し、さらにせん断ひずみが増加するとゴムの破断や剥離が生じるため、ゴムのせん断ひずみが100%付近で滑り接合部に滑りが生じるようにシステムの設計を行った。 ダンパーは外筒と内筒の径を2種類とし、剛性を2/3としたものも製作した。各試験体に使用したゴムは同じものであり、G=0.8N/mm2である。実験の結果Heqは最大で25%程度となり、比較的小さい振幅での加振においては治具に若干のガタがあったため、Heqは概して小さめの評価となった。摩擦材の検討では、H形鋼のウエブの両側に摩擦材を挟みこみ、高力ボルトで締め付け静的加力を行った結果、概ね目標とする100kNで滑りが生じた。 今回の実験で得られたダンパーと滑り接合部の実験結果をモデル化してフレームモデルを作成し、増分解析を実施した結果、バラツキ係数を0.95、低減係数αを0.85とした場合でも8.0となった。従って、各要素の性能は、目標に達していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実施計画通り進捗しており、①デバイスのバランス設計(履歴特性の最適化)および試作,②デバイスの性能評価(信頼性評価・耐久性評価含む),③接合金物の塑性設計,接合金物の性能評価 を完了し、実験で得られたダンパーと滑り接合部の実験結果をモデル化してフレームモデルを作成し、増分解析を実施した。増分解析で得られた荷重-層間変位関係より、各要素の性能は目標に達していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
高減衰ゴムダンパーに滑り接合部を併用したパッシブ制振機構のダンパーと滑り接合部の実験を行い、各要素は、目標の性能に達していることを確認した。 今後は計画通り、システムと軸組との接合部仕様を検討し、木造軸組に搭載した状態での静的せん断加力試験を実施し、デバイスを設置した木造住宅の耐震性能評価および応答予測法の提案を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の実験に伴う実験補助(学生謝金)が計上できていなかったため、物品費を圧縮して次年度執行することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の実験に伴う人件費・謝金(学生実験補助)として使用する予定です。
平成28年度人件費・謝金:0円→120,000円
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