研究課題/領域番号 |
15K06316
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
藤田 智己 仙台高等専門学校, 建築デザイン学科, 准教授 (10552458)
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研究分担者 |
木村 祥裕 東北大学, 未来科学技術共同センター, 教授 (60280997)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 鉄骨置屋根構造 / 損傷メカニズム |
研究実績の概要 |
東北地方太平洋沖地震において、災害時の避難所として使用される重要施設である体育館(鉄骨屋根がRC支持構造の上部に設置された構造:鉄骨置屋根構造)の鉄骨屋根とRC 造躯体を接合する箇所で、アンカーボルトの破断や敷きモルタルの圧壊といった被害が顕在化した。避難所となり得る建物の被害は被災者にとって生死に関わる重大な問題である。そこで本研究では、鉄骨置屋根構造の損傷メカニズムを解明するとともに補強方法を提案することを目的としている。 平成27年度では、被災した体育館を例に、立体モデルを用いた地震応答解析から被災状況のシミュレーションを行った。また、同モデルを用いて支承部のルーズホール幅、支承部とトラス屋根の曲げ剛性、RC下部構造の水平剛性等をパラメータとした解析的検討を実施した。 地震応答解析では、①下部構造の水平剛性が高い妻構面の支承部に水平力が集中し、せん断が卓越して支承部が損傷する。②妻構面の支承部損傷後は、その隣り合う構面の支承部に水平力が集中しだし、支承部損傷は妻構面から中央構面に向けて順に進行する。という鉄骨置き屋根構造の損傷メカニズムを明らかにした。 パラメトリックな解析的検討では、①ルーズホール幅を有することで、ルーズホール側のRC下部構造が独立して振動し、屋根面と逆位相の振動応答となるとき衝突してアンカーボルトが破断する可能性があること確認した。②支承部とトラス屋根の曲げ剛性が高い場合、支承部に作用する曲げモーメントが増加し、せん断と曲げの複合的作用により支承部が損傷することを確認した。③中央構面のRC下部構造の水平剛性を高くした場合、妻構面と各構面の水平剛性の差が小さくなり、妻構面の支承部が損傷するまでのベースシア係数が増加することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、立体解析モデルを用いた静的増分解析、地震応答解析により、鉄骨置屋根構造の損傷メカニズムを明らかにすることができた。また、支承部の損傷に影響を与える因子の検討については、平成28年度まで継続的に実施する計画であり、現在様々なパラメータ(前述した研究実績等)での解析を実施し、その定量的な評価を行っている。得られた知見については、学協会における発表や学術論文への投稿を行っている。以上を総合的に評価し、概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画にしたがい、平成28年度も引き続き、支承部の損傷に影響を与える因子に関するパラメトリックな解析的検討を実施する予定である。解析結果に基づき、鉄骨置屋根構造の保有耐力と変形性能を精査し、想定地震力の設定、応答量を推定するためのモデル化の検討、支承部の補強方法に関する検討を行う予定である。また、鉄骨置屋根構造の動的特性を把握する目的および解析で得られた結果の実証として、縮小模型実験の準備を進めており、準備が整い次第実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、平成27年度後半より次年度の縮小試験体による実験の準備を進める予定であった。しかし本年度(平成27年度)は、解析によるパラメトリックスタディーに主眼を置いて研究を進め、実験については試験体の設計までに留まった。そのため、試験体作成に関する実際の支出がなかったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度では、昨年度使用予定であった試験体の製作、予備試験費用としての消耗品(ひずみゲージ等)に使用する予定である。
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