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津波浸水想定区域に建設される建築物の構造設計や津波避難ビルとしての認定を行うには，津波外力の適切な評価が不可欠である。本研究では、建築物に作用する津波外力の新しい評価式を提案し、既往の津波被害調査結果やシミュレーション解析に基づく推定値との比較により、その妥当性を検証することを目的とした。
津波外力の評価には流速依存性を考慮できるモリソン式を採用し、運動量流束とフルード数の有界性を仮定することにより、設計上想定すべき津波波力の上限値を浸水深のみの関数として提示した。提案式は水理実験でも観測されている津波波力の時刻歴の2つのピーク、すなわち津波先端部衝突時の衝撃力と後続の定常流作用時の抗力に対応するものであり、これにより設計用津波外力の評価が津波ハザードマップなどから得られる浸水深の情報を用いて容易に行えるようになった。
本研究で提案した設計用津波外力の評価式は、2004年スマトラ島沖地震津波や2011年東日本大震災の被害調査結果に基づく推定値と比較され、その妥当性が検証された。しかし、研究開始当初に達成目標としていたシミュレーション解析による妥当性の検証については、その後現有する流体解析ソフトウェアの適用に限界があることが判明し、自作のプログラムコードの開発に予定外の時間を費やしたため、津波伝搬・遡上シミュレーションに用いる波源モデルや地形データ（水深、標高）、祖度データ、堤防データなどの地理データベースの整備を行ったほかには、特記すべき成果を上げることはできなかった。シミュレーション解析による妥当性の検証については今後の課題としたい。
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