研究課題/領域番号 |
15K06323
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
臼杵 尚志 香川大学, 医学部附属病院, 准教授 (90232834)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 手術室 / 体温 / 術中低体温 / 空調 / HEPAfilter |
研究実績の概要 |
2016年1月に竣工した新しい手術室内で、HEPA-filterを通した空調を稼働させて手術台の上と、手術台の側方である術者の立ち位置の頭部(床面より170cmの位置)の温度測定を行った。測定に際しては、術野に向かう手術台直上の層流(以下、中央層流という)と、術者の上に下りる層流(以下、側方層流という)の温度を以下のように設定して、温度を測定した。すなわち、A)中央層流・側方層流とも25℃、B)中央層流を25℃・側方層流を21℃、C)中央層流・側方層流とも21℃の3種類の設定である。 その結果、手術台の上の温度は、A)25.9±2.7℃、B)22.6±0.5℃、C)19.2±0.4℃であり、術者頭部の温度はA)26.8±2.0℃、B)23.6±0.7℃、C)20.0±0.5℃であった。両方の層流温度を25℃とした場合は、術者にとって耐えられない温度と推察され、また、両方の層流を21℃とした場合は、患者にとって耐えられない温度と推察された。中央層流を25℃、側方層流を21℃とした場合は両者ともその中間の数字であり、理想的な値とは言えなかったが、両者ともに許容できる温度とは考えられた。 ただ、この数値は、手術室内にある種々の天井吊り下げ型の機器や、周囲の医療機器の影響を受けるため、種々の条件で、さらなる検討が必要と考えている。 次に、種々の手術時における術者の姿勢を観察したところ、通常の手術の際には術者は術野を覘き込む姿勢になるため、しばしば術者の後頭部に高い温度の層流があたると推察されたが、近年急激にその実施症例数が増えている鏡視下手術の場合は、使用する機器の関係で術者の姿勢は直立かむしろ少し背屈するような姿勢になっていた。つまり、術者頭部の位置が術野から離れ、術者は中央層流の温度の影響を受け難いと推測された。鏡視下手術では、通常の手術よりも体温低下の可能性が高いことが指摘されているが、本手術室の構造はその鏡視下手術に特に有利なシステムであろうと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
竣工した実際の手術室内において、予定通りに中央層流と側方層流を分離し、両者を異なった温度設定とした状況での手術台(患者位置)と術者位置の温度計測が実施できた。その結果から、患者体温に配慮して室温を挙げる時に、術者に向かう温度を下げることで、術者が少しでも快適と感じられる環境が作れることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
016年に供用開始となった新しい手術室で、実施される手術が集積されてきた。手術室の温度設定は、患者が入室してくる当初は患者向けに温かく設定し、麻酔の導入後は、術者に向かう層流の温度を下げ、執刀開始後は術者の意向に沿った調節をするという、従来通りの運用を行っている。この温度環境において実際に手術を受けた症例の手術中の体温がどのように推移するかを、旧手術室における症例データと比較する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費不足分として、2017年度より10万前倒し請求したが、その内41655円は余剰が出たため。
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次年度使用額の使用計画 |
予定通り
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