研究実績の概要 |
【緒言】手術中の快適温度28℃の患者,21℃の術者の快適性の両立の為空調温を違え得る設備を導入,基礎データを得て臨床的に検討した。 【具体的内容】(検討1)新設手術室で術者向け層流温を21℃患者向けを25℃に設定,術者(左右)の肩の位置と手術台上の温度を測定。術者位置ではそれぞれ21.9±1.5℃,21.8±1.1℃,手術台は23.7±1.0℃。 (検討2)①鏡視下胃切除160例,大腸切除316例を旧空調室での胃107例,大腸206例,新空調室での胃53例,大腸110例に分け,執刀後100分までに執刀直前の体温から0.5℃以上の体温低下を認めた頻度を比較。結果,旧空調室は胃:299/1068(28.0%)大腸:711/2024(35.1%)であり,新空調室は胃:10/530(1.9%)大腸:102/1097(9.3%)で有意差あり(胃大腸ともp<0.01)。男女別も同様の結果。②新空調室手術時に室温に不満を述べた外科医無。③胃切除時の出血量は旧空調室で100.5±122.3g,新空調室で55.4±91.8gで有意差を認めた(p=0.02)。 【意義と重要性】周術期合併症誘因となる術中体温低下は性別,術式に左右されるが,手術室温は術者快適温を設定,患者を各種保温具で温めるのが一般的。しかし保温具の手術成績への影響も指摘があり,違う取組が求められている。本空調設備は患者に向けた層流温を暖かく保ちつつ術者向けの温度を低く設定できるのが利点で,(検討1)でその有効性を基礎的に確認し(検討2)の臨床応用で臨床的にも有用性を確認。この結果は患者に暖かい層流が向う事,術者向け層流の温度が低く術者快適性が保て,過度に室温を下げる指示がない事が理由と考えられる。新しい考え方で設置した空調設備で,術者快適性を維持しつつ,周術期合併症を回避する研究,国際的にも今後の手術室の設備設計に寄与するものだ。
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