研究課題/領域番号 |
15K06325
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
曽我 和弘 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (00336322)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 将来気象データ / 気候変動シナリオ / 標準年気象データ / 極端年気象データ / 波長別日射量 / 建築環境 |
研究実績の概要 |
本研究は、気候変動に適応できる建築・設備の計画支援を意図して、将来の気候変動下の室内環境や建築・設備のCO2排出等を予測可能にするため、日本の833地点とアジア諸国の主要都市を対象に、気候変動シナリオを活用して、建築環境シミュレーションに利用可能な時別将来気象データを開発する。 具体的には、日本のA2とA1Bシナリオの近未来と将来気候の時別将来気象データに、①A2の極端年と、②A1Bの標準年、および③A1Bの極端年の時別将来気象データを追加し、日本の時別将来気象データの実用性と汎用性を高めること。さらに、これらの日本の将来気象データの作成技術を高解像度の全球気候モデル(GCM)の予測値に適用する新たな手法で、④アジア諸国の標準年と極端年の時別将来気象データを開発し、その有効性を明らかにすること、を目的とする。本年度は次の研究を行った。 1.時別将来気象データから月別に過酷な気象条件を含む極端月を選出し、それらを接続して、各年代の過酷気象を反映した1年間の極端年将来気象データを作成する方法を検討した。 2.時別将来気象データから月別に平均的な気象条件を含む年の月、すなわち平均月を選択し、それらを接続して、各年代を代表する平均的な1年間の標準年将来気象データを作成する手法を検討した。 3.波長積分全天日射量、気温、湿度から任意天候下における波長別全天日射量を算出する推定式を開発した。これにより将来気象データへの波長別日射量の補充が可能となった。 4.アジア諸国の将来気象データを作成するための時別気象観測値として、11都市におけるEPW気象データを収集し、データの異常値検出と修正処理を行った。また、修正したEPW気象データに合成する気候変動シナリオとしてMRI-AGCM3.2の予測値を入手し、気象要素の月統計値の将来変化を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極端年および標準年の作成法の検討、波長別日射量の推定モデルの開発に加え、アジアの11都市の将来気象データの作成に向けたデータのクオリティーコントロールやGCM出力の分析にも着手できたため、研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
11都市の分析から、アジア諸国の時別気象観測値には、予想以上に異常値が含まれることが判明した。そのため、今後はデータのクオリティーコントロールを慎重に実施する方針である。また、気候変動シナリオには不確実性があるため、その影響を緩和した極端年、標準年の作成手法の検討を継続する。さらに、時別将来気象データから傾斜面に入射する任意天候下の波長別日射量を推定可能にするために波長別天空日射量の推定モデルを開発する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、気候変動適応建築に関する海外調査を計画していたが、難民問題などの国際情勢の不安定化に伴い、本年度は海外調査を実施しなかった。そのため、海外調査で使用予定であった額を次年度使用額として繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、気候変動適応建築の海外調査を実施することにより、使用する計画である。
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