衣替えや暖房機器の使用のような生活上の季節現象を生活季節といい、1963年まで気象庁で観測が行われていた。今日までに地球温暖化・都市温暖化が深刻化し、健康・快適性への要求も高くなっていることから、現代の生活季節とは大きく異なっていると推察される。 本研究の目的は、現代生活における生活季節と気象条件との関係を捉え、桜前線のように衣替え前線や空調開始前線を示すことである。 京都市周辺の7市町に在住の男女各111人を対象に、毎日の生活行為の有無(空調機器使用など21種)、外出時の服装(厚着・薄着の程度10段階)を尋ねるウェブアンケート調査を1年間行った。同期間に、京都で気温・湿度・風速・長短波放射量の気象観測を行い、これらのデータを基に体感温度ETVOを算出した。日平均ETVOに対する生活季節の実施率の散布図より回帰式を算出し、回答者の20%または80%がその行為を開始・終了する日(初日20/80%・終日20/80%と称す)のETVO(初日20/80%ETVO・終日20/80%ETVOと称す)を算出した。全国836の観測地点の日平均ETVOが算出した初日20/80%ETVO・終日20/80%ETVOと一致する日をその地における初日20/80%・終日20/80%と定義し、初日20/80%・終日20/80%の生活季節の等日線図すなわち生活季節前線を作成した。 さらに前線の妥当性を検証するため、全国54都市を対象に、例年いつ頃(各月の上旬・中旬・下旬)に生活行為を始め(終え)るのか、夏の行為の開始・終了、冬の行為の開始・終了の4回に分けてウェブアンケートにより尋ねた。年中する人・しない人を除いて算出した累積度数分布が20%・80%となる日付を読み取り線図と比べると、九州・沖縄では概ね一致したものの、北にいくにつれてずれが大きく、線図の改善の余地があることを明らかにした。
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