透析患者は、貧血や血行不良により健康者に比べ体感温度が低くなったり、末梢神経障害による温冷感の鈍化により、同じ室内において健康で活動量の高い医療スタッフとの間で快適性の差が生まれやすいと考えられる。そのため、患者・医療スタッフともに環境に対する不満・不快感を抱えているのが現状である。そこで、本研究では、天井放射冷暖房システムを設備した透析室を対象とした実測調査などを通して、透析患者、医療スタッフ各々の快適範囲を明確化し、健康で快適な病院建築環境基準の提案を行うことを目的としている。平成27年度は文献調査を実施し、研究の位置づけを明確にすることに加え、以下の項目を実施した。 1)中央監視温湿度データの解析: 透析室の年間を通した空調運転状況把握及び透析室の温熱環境の特性を把握することを目的とし、中央監視温湿度データを解析した。本透析室では、インテリアゾーン、ペリメーターゾーンの2か所で温湿度を1時間おきに計測している。このデータを利用した。また、透析室の温湿度データと合わせて一般入院病室のデータも解析、比較し、透析室の温熱環境の特徴を把握した。 2)長期温熱環境測定: 透析室における室内環境を詳細に把握するため、通常稼働状態で透析室内の温熱・空気環境測定を行った。測定は、ベッド位置及び室内代表点にて実施した。ベッド位置での測定は、ベッド面高さにおいて、空気温度、相対湿度、グローブ温度を5分ごとに計測した。スタッフエリアと患者エリアに室内代表点にを設け、上下温度分布、放射温度、相対湿度を5分ごとに計測した。加えて、気流速度、二酸化炭素濃度、給気温度(空調吹き出し口近傍空気温度)、天井パネル表面温度、壁面温度の測定も実施した。
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