研究課題/領域番号 |
15K06334
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
小林 茂雄 東京都市大学, 工学部, 教授 (20262313)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 避難照明 / 高台避難 / 社会実験 / 地形 / 気仙沼 |
研究実績の概要 |
震災からの復興に向けて大きく変わろうとする宮城県気仙沼において、沿岸部の独特の風景を夜間にも感じ取るようにすることと、夜間に災害が発生した際に速やかに避難できるような光環境を整えることを同時に提案した。安全性の確保が求められる沿岸地域では、通常JISの照明基準や道路照明基準に沿った画一的な屋外照明が計画されることが多く、地域の風土や景観が考慮されることはほとんどない。地域性を取り込むことが安全性の確保にも寄与する可能性があることを提起した。 気仙沼は湾を囲むように街が形成されており、この沿岸部の風景を可視化することを中心に夜間光環境を検討した。気仙沼湾に張り出した五十鈴神社などを対象に、既存の屋外照明の代わりに、地形や経路の認識を効率よく向上させることを意図した照明設備を約1か月間点灯した。この照明実験の前後で、避難路の認識の度合いや避難(高台)方向の認識度合いの調査を行った。 実験の結果、提案した光環境において避難路や高台方向の認識は向上し、気仙沼らしい景観も形成可能なことが分かった。また効率的な照明配置とすることで消費エネルギーも抑えられることを確認した。 今回は気仙沼の夜間景観を可視化する仮設的な照明社会実験を行ったが、実験結果を踏まえて今後の常設の照明へと取り入れる上では考慮しなければならない点がある。避難経路と高台への避難経路入口の認識を向上させることは急務の課題である。ただしこうした景観照明が常に点灯していることが良いのかについては賛否の声がある。人の多い時間帯に日常的に灯す常態の光と、非常時に点灯する光をある程度区別することも必要になるだろう。津波が来た場合などの緊急時には、照明を点滅させるなど視認性の高い光を使って、人々に異常な状況を認識させて避難を誘導するなどの工夫も考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
気仙沼において避難照明に関わる社会実験を行い、想定していた効果を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
さらに被災地で実験を継続させると共に、防災に配慮した地域の夜間照明の在り方をまとめる。また実験結果を元に、行政やまちづくり協議会などとも協同し、常設照明としての実現可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年4月現在も実験を実行中であり、昨年度使用する予定であったものが若干年度をまたぐこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度最後の実験で消耗品として使用する。
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