研究課題/領域番号 |
15K06335
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
小笠原 岳 明星大学, 理工学部, 准教授 (30516232)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | クリーニング工場 / 温熱環境 / 実測 / アンケート / 工場 / 労働環境 |
研究実績の概要 |
本研究では、夏期における温熱環境の悪化リスクの高いクリーニング工場を対象に、現地実測調査・アンケート調査による実態の把握ののちに、取得したデータを基に、高熱発熱体が存在する大空間における効率的な空調・換気システムの検討を実施する計画である。 研究初年度のH27年度は、関東圏に立地するふたつの中規模クリーニング工場を対象に、物理環境調査およびアンケート調査を実施した。選定した工場のうち、ひとつは作業スペースにスポット空調が設置されているが、もう一つの工場は扇風機が多く設置されているものの、空調設備は設置されていない。 物理環境調査の結果、夏期の工場内温度については、空調設備が設置されていない工場では外気温よりも3~4℃高く、工場操業時間中はほぼ38℃を超える状況であった。これに対し、スポット空調が設置されている工場では約2℃高い結果となり、常時34℃程度であった。このように、空調設備を持たない工場内部では非常に高温となり、またスポット空調導入工場においても工場内温度は外気より高い状況であった。 物理環境調査を実施したふたつの工場を対象に、作業者に対するアンケート調査を実施した。アンケートは業務用厨房の作業従事者を対象として開発されたPOEM-Kを参考にして作成した。アンケート調査の結果、クリーニング機器からの放射熱を「感じる」と答えた作業者が両工場とも80%を超え、低放射型機器開発の必要性が示唆された。また、多くの作業者が作業中に気流感を得ているが、気流をどのように感じるか?の設問では8割前後の回答者が「不快」と申告し、気流が必ずしも温熱感の改善に寄与していないことが考えられる結果となった。総合的な温熱環境を「不快」または「やや不快」と回答した割合は、空調設備なしの工場では52%、スポット空調設置の工場では43%という結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、初年度のH27年度において、空調設備に大きな違いがあるふたつの中規模クリーニング工場を対象とした物理環境調査およびアンケート調査を実施し、それぞれのクリーニング工場内の環境について概ね把握することができた。また空調設備の有無が室内温熱環境や作業者の心理的状況に与える影響についての比較を行うことができた。 よって現在までの進捗状況は概ね計画通りであると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では研究2年目となるH28年度以降に、CFD技術を用いて、これまでにクリーニング工場に導入されていない置換換気空調システムなどの新規技術について、ケーススダディを実施する予定としていた。しかし、調査の過程で、給気や排気の経路が明確でなく、建築設備上の問題を有する工場が数多く見られた。例えば、H27年度に実施したクリーニング工場よりも厳しい衛生基準下で運用されている病院衣類・寝具を専門に扱うクリーニング工場は、工場内部の建築空間が細かく区切られており、より綿密な換気経路の設計が求められる状況にある。しかし現状では設備計画が十分であるとは言えず、局所的な高温空間や各室間の圧力バランスなど、多くの問題を抱えている状況である。そのため、本年度以降は置換換気空調システムなどの新規技術に関する適用性を検討するのではなく、問題を抱える現有の多くの工場を想定し、空気流動の側面から空調・換気設備の問題点を実測・CFDにより検証し、改善の方向性を見出すこととした。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費に関して、極力出張回数が多くならないように努めたため、残金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度において、当初計画に無かったクリーニング工場の実測を実施することとなったため、そのための機器類購入および交通費に充当予定である。
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