研究課題/領域番号 |
15K06336
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
岡田 恭明 名城大学, 理工学部, 准教授 (20367741)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 風車音 / 周期性変動音 / ロータ回転速度 / 放射指向特性 / 環境影響評価 / 風速 |
研究実績の概要 |
研究初年度では,過去に風車周辺で測定した音響データを活用して,人のアノイアンスを増大させると言われている周期性変動音(スイッシュ音)を評価可能な指標値の実用的な算出方法を検討すると共に,その周期性をみるためのロータ回転速度を音響データから推定する方法についても併せて提案することを目的とした。まず,実用上の簡便性を考慮して,100ms間隔で再分析した音響データとその移動平均との差から周期性変動成分を抽出し,ブレードの通過時間の逆数の周波数(ブレード通過周波数 Blade-Passing-Frequency)をFFTにより求め,その周波数BPFからロータ回転速度の推定を試みた。推定値と実際のそれらとを比較した結果,音響データから推定したBPFと実際のそれの平均値とでは0.1Hz程度のずれが生じる場合もみられたが,両者の対応は概ね良好であること,また,ロータ回転速度の推定値の大部分(全体の98%)は,実際の平均回転速度の0.5rpmの誤差範囲に収まっており,測定した音響データから回転速度をある程度の精度で推定できることがわかった。また,スイッシュ音の変動の程度を表す変調深さ(変動音の90%レンジ)は,評価対象時間を30秒間あるいは1分間とした場合でもほぼ同じで,概ね2~4dBの範囲に多く分布していることを確認した。 一方,他の既設風車を対象にしたフィールド実験を5日間にわたり実施し,測定した音響と気象データの解析を現在進めている。しかしながら,風車の稼働データ(ロータ回転速度,ナセル方位)の入手が困難であったため,上述した手法を適用して音響データから稼働状況を推定することを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗状況についてやや遅れていると判断した理由としては,既設風力発電施設を対象とした実験を5日間にわたって行ったが,詳細な風車の稼働データ(ナセル方位とロータ回転速度)を入手することが難しく,検討した推定方法の妥当性を検証するには不十分な点が懸念される。なお,発電出力とナセル高さでの風速はビデオ撮影で記録している。そのため,他の発電施設での実施に向けて協力依頼などの調整が必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に測定した音響データの解析を進めると共に,それよりも少し規模の大きいフィールド実験の実施に向けて,協力依頼が可能な発電施設の候補地を探す予定である。また,それらと並行して,音響データ(スイッシュ音)を用いたロータ回転速度の推定方法の妥当性,その評価量の実用的な算定方法などについて検討を進め,スイッシュ音の放射指向特性なども明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
既設の風力発電施設におけるフィールド実験を3月19日~22日に実施したため,その諸経費(レンタカー代,高速代,ガソリン代)が次年度額として生じたこと,また今年度実施した発電施設では大規模な実験まで行うことが困難であったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
大規模なフィールド実験に協力していただける施設候補を探すことで,実験に係る諸経費として使用する予定である。
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