研究課題/領域番号 |
15K06344
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
北原 啓司 弘前大学, 教育学部, 教授 (30177860)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 震災復興 / 高台移転 / コンパクトシティ / 災害危険区域 / 防災集団移転 / 津波復興拠点 |
研究実績の概要 |
本年度は、大きく二つの研究調査を実施した。一つは、防災集団移転等により、災害危険区域から居住地域を移転させる事業を進めている各被災都市の跡地活用の計画の実態を探るということである。研究当初は、山元町、石巻市といった典型的な都市のみを調査する予定であったが、次年度の予定であった北は久慈市から南は南相馬市までのヒアリング調査を先行的に実施し、宮古市、釜石市、大船渡市、石巻市の資料収集および関係者へのヒアリング調査を実施し、跡地を如何に将来的なまちづくりに活かすかという点からの復興まちづくりのあり方に関する実態と可能性を明らかにできたと考える。 一方で、市庁舎移転による機能集約に関わる「参加」プロセスのあり方に関する調査研究として、JR駅北側に新庁舎を含む防災拠点施設を建設する計画を進めている宮古市において、現市庁舎跡地および中心商店街、そして新たな庁舎との関係性をどのようにつくっていくか、そして現市庁舎跡地をどのように活用するかを検討する市民ワークショップを、宮古市企画部および岩手県立短期大学内田信平研究室との連携のもとに継続して開催し、市民自らによる復興まちづくりプロセスとコンパクトシティ政策とをつなげる可能性と課題を、実践的に明らかにすべく研究を進めることができた。 なお、東北地方整備局内に設置されている「コンパクトシティ推進研究会」に参加し、関係自治体と立地適正化計画に関する意見交換を行い、震災復興と立地適正化との関係性についてのアンケート調査を次年度に詳細に実施することとして、その調査票作成のための検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
被災都市に対するコンパクトシティ政策に関するアンケート調査を、先に実施する予定ではあったが、立地適正化計画が策定される時期と重なっていることと、未だに復興まちづくりの進展が遅れている状況にあって、アンケート調査を次年度に延ばし、そのかわりに次年度に実施する予定であった被災自治体の防災集団移転跡地のマネジメントに関わるヒアリング調査を実施することができたことで、3年間の研究計画を考えた場合に、おおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は、昨年度から実施を持ち越した「復興まちづくり計画におけるコンパクトシティ政策の位置づけに関するアンケート調査」を被災した自治体に対して実施する。そこでの質問項目は、①コンパクト&ネットワークという観点から捉えた復興計画の自己評価②計画担当者自身のコンパクトシティ像③防災集団移転とコンパクトシティ政策の矛盾意識の有無④復興公営住宅の立地とコンパクトシティ政策との調整について等である。 一方で、昨年度より開始した防災集団移転跡地のマネジメントに関する実態調査を、岩手県久慈市から福島県いわき市に至る残りのすべての被災自治体を対象に実施する。方法としては、各自治体を訪れ、計画図面を閲覧しながらヒアリングを実施するとともに、現地調査も行うこととなる。なお、その中で、大船渡駅周辺地区におけるエリアマネジメントの実態については、詳細に調査を実施する。そこでは、市役所担当者、開発主体、ビル入居予定者等へのヒアリングも実施することとなる。 また、復興まちづくりにおける「参加」プロセスの推進に関する調査としては、継続して、宮古市庁舎移転に関わる市民参加プロセスの研究を前年に引き続き、現庁舎跡地の活用を中心とした市民ワークショップの運営およびその計画への反映プロセスに関わりながら、実施していくとともに、石巻市松川横丁の復興まちづくりの成果であるCOMICHIに関する実態調査を開発主体および支援計画者として関与した真野洋介准教授(東京工大)へのヒアリング調査から明らかにする。また29年度には、女川町における復興まちづくりの「参加」プロセスに関する実態調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画当初に一年目に実施予定であった東北の各自治体に対するアンケート調査であったが、いくつかの自治体へのヒアリングの中で、震災から5年を経過するまでは、復興のための作業負荷が大きく、翌年にした方が回収率が高くなるとの助言をいただき、二年目に本格実施することとしたため、その印刷費およびデータ整理分析のための謝金支出が無くなり、次年度に303395円を残すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
上述のように、東北のすべての都市に対して、コンパクトシティおよび立地適正化計画に関する現状認識と計画の方向性について、詳細なアンケート調査を郵送配布により実施する。なお、被災自治体に対しては、作業に負担をかけないことと、被災自治体に対しての特別な設問も用意することから、実際に当該市役所に出向き、聞き取り調査を実施する予定である。調査票印刷費、データ整理および分析に関わる作業補助謝金、聞き取り調査に要する旅費および補助者謝金、また分析結果を報告書にまとめ、各自治体に配布するための印刷費・郵送費で使用する計画である。
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