東日本大震災および福島第一原発事故の被災地域は、我が国の中でも人口減少・高齢化・経済停滞が深刻であった地域であり、被災者が早期に安定的な日常生活を取り戻すこと、そして、それが同時に環境、経済、社会の面でのレジリエンスを高め、持続可能な地域の形成につながること、およそこのような道筋にそって復興が進むことが求められている。特に、環境面でのレジリエンスと持続可能性を高めることは、折からの低炭素社会の実現、省エネルギー化の推進、資源の循環利用・消費効率化に加えて、原子力政策の見直しに伴う再生可能エネルギーの普及促進という新たな社会的要請に鑑み、被災地域の復興を進める上で重要な課題である。 本研究は、こうした背景のもとに、①“環境創造”という観点から、東日本大震災に伴う地震・津波被災地域における復興まちづくりの実態と課題を体系的に明らかにするとともに、②“環境回復”という観点から、福島第一原発事故に伴う放射能汚染地域における復興まちづくりの実態と課題を体系的に明らかにすることを目的とするものであり、今後の被災地域における復興まちづくりのあり方、そして、我が国の環境まちづくり政策のあり方を検討する上で重要な意義を有するものと考えられる。 2017年度には、2015年度および2016年度に実施した研究の成果、すなわち、“環境創造”についての被災3県における環境復興まちづくり、“環境回復”についての福島県における除染・復興まちづくりに関する研究の成果を踏まえつつ、本研究全体のとりまとめを行い、論文の発表や書籍の出版作業などを実施した。 研究期間全体を通じて、福島県を中心とする東日本大震災および福島第一原発事故の被災地域を対象として、“環境創造”と“環境回復”の両面から、“環境復興まちづくり”の実態や課題を総合的に明らかにすることができたと考えられる。
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