研究課題/領域番号 |
15K06351
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
高見沢 実 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (70188085)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 都市計画制度 / 近隣計画 / まちづくり条例 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、27年度調査を踏まえて、特に、全市マスタープランと近隣計画の関係を中心に分析した。その意図としては、今後の日本の都市計画制度を考える際、「まちづくり条例」で各地で積み上げてきた地区まちづくりの経験を、単なる地区ごとのまちづくりにとどめるのでなく、都市計画システムの中で制度的に位置づける時期にきているのではないかとの仮説がある。本年度の研究によって、国-基礎自治体-近隣の関係も含めて、概ね近隣計画制度は順調に普及しており、投票で可決した地区数は一昨年度の30件、昨年度の160件から、直近では300件を突破した。近隣計画への取り組み地区が市域の多くをカバーする自治体も、ウエストミンスター区(ロンドン)やウインザー市に加え、アランその他のひろがりをみせていることがわかった。ただし逆に、全市マスタープランにおいて近隣計画についての言及がまったくない自治体も多数あることが国の調査報告で公表されるなど、新たな法制度の課題も指摘されている。 同時に、複数の近隣計画運用事例の実地調査もさらに加えた。その結果、たとえば建築環境の「保全」を主とする地区であっても道路交通環境が問題になっていることや、時間はかなりかかったものの「ビジネス近隣計画」策定が最終段階にさしかかっている事例がロンドンでも出てきたこと、自治体をまたがる近隣計画も10を超えて取り組みがみられることなどがわかった。 一方、近隣レベルの計画やマネジメントを取り込んだ新たな都市計画法制を意識しつつ、本年度は、まちづくり条例によるこれまでの経験を、都市計画制度に位置づけるシステムのラフスケッチを行った。関連学会や協会等からの既存の提案とも比較しつつ、これまでの経験により近隣レベルでの日本の取り組みが次第に「計画」「ルール」に加えてそれを実際に運用する力をつけていることを踏まえて、新しい制度設計の方向を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画に従っているため。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の29年度は、27年度、28年度の成果をさらに深化・発展させ、制度提案に至ることを目標とする。その際の基本目標は、第一に、全国の多様な都市計画課題に柔軟に対処するために、「上からの」都市計画法改正ばかりでなく、地方が自立し都市計画を自らの意思で行う本格的な分権改革となること、第二に、分権というとき、地方自治体への分権のみならず地域や近隣への分権を同時に可能としそれを促すシステムを構築することである。 そうした新しい法制度組み立ての基礎となるこれまでの以下の知見を総合化する。 第一に、「横浜市地域まちづくり推進条例」は、地方分権後の都市計画(まちづくり)を推進する普遍的なツールの1つとなりうる。条例により近隣レベルのまちづくり運営主体を定め、まちづくりルールやプランへの適合性を審査することで、地域が主体となってきめ細かなまちづくりを可能にするものであるととらえ基本骨格とする。第二に、全国調査では、「まちづくり条例」の30年の蓄積により、近隣レベルの都市計画を都市計画制度に体系的に取り込む可能性が把握できた。ただし、それにはバリエーションがあり、そうした各地の特長を包含しつつ、さらに可能性を広げる制度設計を検討課題とする。第三に、Localism Actは、地方分権改革のなかで「近隣計画」を位置づけ、そのフレームを定めているだけで、まさにそのことにより地域の実情~主体形成、地域テーマ、全市計画との役割分担、財源等~に応じた多様な展開が可能である。まだ試行錯誤段階とはいえ、全市計画と近隣計画が補完し合って都市計画を構成する都市計画制度先行事例として参考にする。そのため、引き続き運用段階の事例が多数みられるイギリス都市計画制度をフォローする。 以上を踏まえて「近隣レベルの都市計画を統合する新たな都市計画システム」を具体的に提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
262806円の次年度使用額のうち、前年度からのものが234656円、本年度のものが28150円である。つまり、本年度は結果からみて計画通りとなっている。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度が最終年度となるため、現時点において次年度使用額も含めた新年度計画を立て、当初計画に最もふさわしい使用計画とする。 次年度は成果物を重視し、報告書等の形で成果内容をしっかり発信する。そのため、「その他」の部分での執行額を増やすとともに、とりまとめにかかる「人件費・謝金」を厚くする。
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備考 |
本研究関連成果を常時更新しながら公開している。 Localism and Planning(イギリス最新都市計画統合ファイル) http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20131223/1387799666/
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