最終年度の29年度は、27年度、28年度の成果をさらに深化・発展させて具体的な制度提案を行った。そこでの基本目標は、第一に、全国の多様な都市計画課題に柔軟に対処するために、「上からの」都市計画法改正ばかりでなく、地方が自立し都市計画を自らの意思で行う本格的な分権改革となること、第二に、分権というとき、地方自治体への分権のみならず地域や近隣への分権を同時に可能としそれを促すシステムを構築することである。 そうした新しい法制度組み立ての基礎となるこれまでの以下の知見を総合化した。具体的には第一に、「横浜市地域まちづくり推進条例」は、地方分権後の都市計画(まちづくり)を推進する普遍的なツールとまずはとらえ、新しい都市計画法では近隣レベルのまちづくり運営主体を定めてまちづくりルールやプランを策定できる内容とした。第二に、全国調査を踏まえると近隣レベルの都市計画を都市計画制度に体系的に取り込む際には地域ごとのバリエーションを可能としつつ、さらにその可能性を広げる制度設計とした。第三に、Localism Actは、地方分権改革のなかで「近隣計画」を位置づけ、そのフレームを定めているだけで、まさにそのことにより地域の実情~主体形成、地域テーマ、全市計画との役割分担、財源等~に応じた多様な展開が可能であるととらえて制度設計の参考にした。運用段階の事例が多数みられるイギリス都市計画制度のフォローアップ調査も実施した。 なお、近隣レベルの計画を位置づけるためには現行都市計画法全体の見直しが必要と判断し、新たな公共観を反映した新法の骨格を提起している。こうしてはじめて「近隣レベルの都市計画を統合する新たな都市計画システム」を具体的に提案することができた。
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