研究課題/領域番号 |
15K06355
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
野嶋 慎二 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70303360)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 都市再生 / 都市デザイン / 土地所有 / 城趾周辺地区 |
研究実績の概要 |
本研究は、集約型都市構造に向けて、重要な歴史文化的資源及び耐用年数が過ぎて更新が必要な公的施設が数多く存在する、城趾周辺地区の開発手法に着目し、その持続的な再生計画と開発手法に関する知見を得ることを目的としている。本年度は、福井市を題材として、2つの研究を進めた。 1.都市機能の集約化に向けた城趾周辺地区の土地の権利移動の実態分析 福井城趾周辺地区約58haにおける過去50年間の登記簿の分析により、1303筆の土地の売買、相続の実態を経年的に明らかにした。その結果、所有者の共有している土地の増加や分筆による権利の細分化、所有者の居住地の広域化が進んでいること、近年の土地取引では、低未利用地に用途変更されている土地が多いことがわかった。しかし、一方で、個人所有や区域内居住者といった地元につながりのある所有者の存在が大きく、今後の土地の有効活用にあたっては、これら地元所有者の土地活用に対する意識付けが重要であることが明らかになった。こうした、土地所有の問題を経年的にあるいは広域的に登記簿データから明らかにした研究はみられず、土地所有実態把握の有用な資料と考えられ、他都市でも土地所有の実態と所有意識の実態把握に基づいた、再生手法の検討の必要性を明らかにした。 2.地区特性に対応した城趾周辺地区の再生手法の提案 福井市城趾周辺地区で、中心拠点として都市機能を集約化しながらも歴史的な資源や構成原理に立脚して、魅力的な都市空間を再生して行く都市デザイン面からの手法の検討を行った。福井市は戦災震災を受けて復興区画整理を行い、また駅が城址に近接してできたことにより、市街化が著しく進んだ都市である。江戸時代から現在に至る、その時々の歴史を読み取り、その都市特性に応じた再生手法の検討の必要性を指摘し、そのための都市デザインの手法を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、城趾周辺地区特性に対応した望ましい計画と持続的な開発手法の提案を行うことを目的としており、そのため、H27年度は、研究(1)「全国地方都市における城趾周辺地区の歴史的変遷と現況分析による地区特性データベース作成」及び研究(2)「城趾周辺地区における自治体による再生計画データベース作成」を行うことを予定していた。このため人口5万~50万人の全国402都市(東京を除く)について、都市の中心部に城趾が含まれている都市、全119都市を研究対象都市として研究を進めてきたが、研究を進めて行く課程で、下記のことが課題となった。 ①研究対象都市には、研究すべき再生計画を持たない都市、再生事業を持たない都市が多く含まれていること。②研究対象都市でない都市に、研究すべき計画や事業があること。③研究対象都市におけるデータ収集が訪問しなければ得られないデータが多くあること。 以上より、研究対象都市を見直し、あるいは絞り込む作業をまず行うことが必要となった。そのため、平成28年度以降に行う予定の調査であった、「福井市での城趾周辺の現状の詳細分析」「地区特性に対応した城址周辺地区の再生手法の提案」について平行して行い、城趾周辺地区の実態把握と再生計画の着目点を整理することを行った。
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今後の研究の推進方策 |
1.H27年度に行った、福井市における都市機能の集約化に向けた城趾周辺地区の土地の権利移動の実態分析を研究論文としてまとめる。 2.現在までの進捗状況で述べた通り、下記の研究を進めながら研究対象都市の見直しを行いながら、データベースの作成を行う。 ①城址周辺地区の再生計画のデータベースを作成し、整備方針、計画、事業を抽出しまとめる。②先進都市における計画と再生計画と適合したプロジェクトの事例分析を行い、研究対象都市を絞り込む。③順次、地区現況のデータベースの作成を行う。 3.国内外の専門家とのディスカッション 上記で得られた、モデルプロジェクトや再生手法について先進的な都市デザインを実践している国内外の専門家とのディスカッションを行い、知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの進捗状況で述べた通り、調査対象都市の絞り込みを行うため、先行して福井市での調査研究を行った。そのため、全国の対象都市での調査費(旅費)の使用が減少し、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度は、全国の対象都市での現地調査及び英国での専門家とのディスカッションを予定しており、主に旅費及び謝金として使用する予定である。
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