本研究は,住宅地を構成する住宅群と外部空間,近隣商業施設をコミュニティ形成の場として捉え,その整備の報告性を探ること,ならびにソーシャルキャピタルの活動を活性化させるための地域再編計画を立てるための知見を得ることを目的として,最終年度では以下のような調査研究を行ったものである。 (1)民間企業開発のさつき野住宅を対象とした研究:昨年度までは公的開発ニュータウンを対象としたが,今年度は東急不動産が開発した堺市美原区に存在する「さつき野住宅」を対象とし,全戸へのアンケート調査を実施し住民のコミュニティへの意識を探った結果,現状のコミュニティ活動は活発である一方で,自治会活動を負担に感じ始めている高齢者が増加しつつある現状等を把握できたこと,(2)コミュニティスペースを有する民間施設を対象とした研究:昨年度に引き続き,公的施設でない民間施設を対象として,その開設経緯や利用実態を調査した結果,必ずしも民間施設の利用が進んでいるわけでない現状等を把握できたこと,(3)ニュータウンの外部空間における花壇の維持管理に関する調査:花壇の維持管理を通じたコミュニティ形成の在り方を探るために,今年度は神戸市須磨ニュータウンを対象として市民花壇と勝手花壇の管理実態を調査し,現状を把握したこと,(4)集落におけるコミュニティ形成に資する神社を対象とした研究:三重県熊野市を対象として,神社を含む地域施設の管理運営を通じたコミュニティ形成の実態を調査することでその実態を明らかにし,集落におけるコミュニティ活性化の手法を探ったことなど,さまざまなフィールドにおけるソーシャルキャピタルの活用状況を明らかにした。 以上3か年にわたる研究で,ニュータウンから農村集落まで,公的施設から民間施設までと様々な段階におけるコミュニティ形成のためのソーシャルキャピタルのありかたを明らかにできたと考える。
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