本年度は最終年度のため、主に成果報告のための国際シンポジウム、研究報告のための海外渡航、国内研究会を開催した。 国際シンポジウムは、アメリカと日本の関連研究者が愛媛に集い、新しい市のあり方や都市農村関係論についての熱心な議論が行われた。シンポジウムには、専門家だけでなく、普段ファーマーズマーケットに訪れる一般市民も多く訪れ、研究のテーマや内容を広く一般市民にも周知するよい機会となった。 調査報告のための海外渡航の一つは、アジア農村社会学会(インドネシア、スラウェシ島、ハサヌディン大学)に参加し、研究報告を行った。ここでは、農産物直売所の利用者に対するアンケート調査の結果、地域自給の実態を明らかにした研究報告を行った。その結果、農産物直売所などでの流通の実態は、統計で把握されていないため、統計上推計されている地域自給(今回の場合は、栃木県宇都宮市の地域自給)の25%に対して、農産物直売所利用者の調査では、宇都宮市内の自給率は48%、近隣5市町を含めると60%にも上ることが明らかになった。このことは、宇都宮市民の胃袋を支えているのは、近隣5市町を含む領域であり、これらが宇都宮市民のフードシェッドと把握できること、さらに、そうしたことから、消費地である都市と生産地である農村の関係を持続可能なものにするための、フードシェッドという捉え方が有効であることが指摘できた。2つ目は、以前から共同研究等を行っている研究者らとの研究会でスコッランドのグラスゴーカレドニアン大学で実施した。どちらも、研究成果に対しての熱心な議論が行われた。 国内研究会は、現地調査の機会も兼ねて、帯広市で開催した。これまでの共同研究のまとめと、今後の展開方向について、代表者と分担者で話し合いをもった。
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