本研究は,開発から時間が経過し高齢化,更には空き家・空き地の増加が進行している郊外ニュータウンを対象に,従来の住宅のリフォームや建て替えのみでなく,中古住宅の創造的なリノベーション,シェアハウスやカフェ等へのコンバージョン,地域内の空き店舗やアパートの活用等を通して,地域空間の機能,さらにはコミュニティの複合化を果たすことにより,その持続性を高める方策を考察することを目的としている。最終年度である平成29年度には,対象フィールドを福岡県宗像市の日の里ニュータウンに定め,コミュニティの複合化を目指すための様々な活動を行った。特に,研究代表者らのチームで実際に空き店舗を賃借し,地域の活動拠点「日の里サードベース」の運営を行った。その結果, 1)仲間を募りながらDIYリノベーションを実施することによりリノベーションに関心を持つ居住者のネットワーク形成を図った。実際に,参加者の中から自宅で住み開きリノベーションを行うものが現れるなど,地域での効果が生まれている。 2)サードベースでのまちづくりワークショップやイベント等を連続して実施をする中で,地域居住者,地域内外の意欲的な担い手,関心を持つ企業,行政等と頻繁な議論を行う場が形成された。さらに,次年度以降に地域のエリアマネジメント団体を設立する母体となっている。 3)地域で新たな仕事を始めるためのスタートアップの場として,無料での場所の提供を行った。その結果,サードベースでの活動を通して,実際に近隣の空き店舗を単独で借りて営業する担い手も現れた。特に,住宅地において,子育て中の女性のスタートアップの場が求められていることが明らかとなった。 以上の拠点を活用したアクションリサーチを元に,次年度以降は民間の資金等を活用したエリアマネジメント活動に取り組むことを計画している。
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