建物維持管理業務の高度化を目指し、「センサネットワークを用いた維持管理データベースの自動構築」、「当該データの横断的分析とBIMを用いた分析結果の視覚化」を可能とする一連のシステムの開発を本研究の目的とする。 本研究の特色は、1)センサネットワークによってデータを自動収集し建物の「今」を自動データベース化する、2)BIM技術と融合させたウェブシステムで当該ビッグデータの分析結果を視覚化する、3)実在建物において開発システムを試験運用する、の3点である。 今年度は、以下について研究を行った。7)各種環境センサに加え、施設利用者の着座状況を放射温度センサによって検出・推定するシステムを開発した。これにより、これまで把握が困難であったセンシングエリア内での利用者の人数や動きをある程度とらえることができ、建物運用へ有益な情報をフィードバックすることができる。また、開発したシステムを実在するオフィスビルで試験運用し、8割程度の推定精度を確認した。8)センシングデータと維持管理データを3Dモデル上で統合的に表示するためのクラウドシステムベースのBIM活用維持管理ウェブシステムを拡充した。具体的には、インタフェースや動作速度などの基本的な性能を向上させると共に、建物内での利用者の人数や動きなどの「今」を視覚化する機能を開発した。9)開発したセンサ装置及び維持管理支援ウェブシステムが一連のシステムとして問題なく稼働するか、または維持管理業務の効率化、高度化にどの程度寄与するかを検証した。その結果、建物維持管理全般に関する情報のデジタル化のための3Dプラットフォームとしては十分機能し、将来的には維持管理の高度化に役立つことが明らかとなった。課題として、維持保全センサの検証や維持管理情報の横断的分析が不十分であることがあげられる。また、維持管理情報の入力支援は達成できたが、閲覧支援は不十分である。
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