| 研究課題/領域番号 |
15K06372
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| 研究機関 | 名古屋市立大学 |
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研究代表者 |
鈴木 賢一 名古屋市立大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (00242842)
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| 研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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| キーワード | インテリアデザイン / 病院 / 療養環境 / 医療環境 |
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| 研究実績の概要 |
病院建築では、医療機能の充実が優先され、利用者にとっては非日常性や閉鎖性が表出しがちである。結果として利用者である医療従事者や患者にとっては、療養環境あるいは職場環境に求められる人間と空間の親和性、快適性が欠如しがちで、ストレス要因となる。本研究は、病院の高度医療空間における医療従事者の労働と患者の治療・療養生活におけるストレスを緩和する環境デザイン要素を明らかにし、最終的には利用者の満足度向上に寄与する整備指針を目的とする。
研究目的、計画に沿って、病院内の機能別にインテリアの要素毎にどのような緩和要素が見られるかを整理した。機能については、医療が主体となって治療や検査などが行われる医療空間と、患者が院内に滞在したり、あるいは入院生活をしながら病気の回復を待つ療養空間とでとらえることで環境整備に向けた理解が進むことがわかった。前者では、医療者、患者とも高度な医療空間から強いストレスを受ける。したがって、一時的な「紛らわし」や「気晴らし」が求められ、後者では、患者自身の療養が快適で安心な環境が基盤となった、心理的な側面からの「受入れ」や「居心地の良さ」が求められることが明らかになった。
また、インテリアデザインを部位別にとらえると、建築要素、家具要素、装飾要素として整理することができる。建築要素は、病院環境の基盤を形成する。家具要素は、利用者の活動に直接関連する。装飾要素は、生活空間に彩りを与える。
これら医療と療養の２つの機能空間と、建築、家具、装飾の３つのインテリア要素で構成されるマトリックスによってデザイン指針を効果的に示しうることがわかってきた。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究では、総合病院の患者の療養環境向上に関する実践と研究成果をふまえ、病院の高度医療空間における医療従事者の労働と患者の治療・療養生活においてストレスを緩和する環境デザイン要素を明らかにし、満足度向上に寄与する整備指針を導き出すものである。
整備指針を導き出すにあたっては、概ね以下の３段階（①高度医療環境における医療従事者と患者別の緩和的環境要素の抽出、②緩和的環境要素の導入普及の実態把握、③緩和的環境要素の導入整備体制）のステップを踏む。
初年度は、①高度医療環境における医療従事者と患者別の緩和的環境要素の抽出の段階で、高度医療を実施する人工環境で囲われた医療施設において、医療従事者と患者が潜在的に、どのような緩和的環境要素を求めているかを探り出す計画を立てた。ここでは、手術部、集中治療室、病棟などの部門毎に、スペース、道具、アート、自然などの要素別に抽出を試みる予定を組み立てた。
この段階までは、医療と療養の２つの機能空間と、建築、家具、装飾の３つのインテリア要素で構成されるマトリックスによる環境整備指針の提示が可能であること示し、概ね予定通り調査を進めることができた。
その後、医療従事者と患者で異なると予想される要素を分類するとともに、活用に向けて場所別、人別に緩和的環境要素の体系的類型化を行う予定であったが、医療従事者と患者の差異の分析にまでは至っておらず、人別の分析については継続的に進める予定である。
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| 今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の研究内容については、１）緩和的環境要素の導入普及の実態把握、２）緩和的環境要素の導入整備体制、の２段階を予定している。
１）緩和的環境要素の導入普及の実態把握については、部門別に抽出されたスペース、道具、アート、自然などの要素が、実際の高度医療空間の中にどの程度導入されているかの普及実態を全国的に把握するものである。実態調査を踏まえ、緩和的環境要素を積極的に導入している医療施設を対象に、そうした方針が病院経営上どのような意義を持つのか、地域社会との関係性、医療施設としての意義を明らかにする。そのために、緩和的環境要素を導入する先進的医療施設のデータベース作成を推進する。
２）緩和的環境要素の導入整備体制については、高度医療環境における利用者にやさしい環境整備の手法、環境整備の主体、整備の機会や予算、維持管理に関する方法などについての実態を明らかにするものである。これらから人工的施設環境に由来するストレス解消のための環境整備に関する課題を把握し、今後の整備指針を示す。病院自体が整備主体となるケースの他に、NPOや大学などにより支援されているケースも数多くあると予想されるため、他機関の情報収集の推進に努める予定である。
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