高度救急医療部門に就労する医療スタッフは他診療科に比べ、ストレスフルな環境に置かれている。医療スタッフのストレスを軽減し、満足感を持って仕事に取り組む環境を整えることが適切な医療の提供につながる。最終年度は救急医療部門のスタッフのストレスを把握し、救急現場の特性に合わせた環境整備の基礎的知見を得ることを目的とした。第二次医療を担う地方中核病院の医療スタッフを対象に調査を実施した。第1にスタッフの仕事中の休憩状況を把握し、休憩に求める環境要素を把握した。第2にスタッフの休憩が業務の中でどう取られているかを、1日の業務の流れで把握した。その結果1回の平均休憩時間について、日勤は「45~60分」が一番多いが救急センター、ICU、手術部など部門毎に偏りがあった。夜勤では休憩時間60分以下のスタッフがおり、十分に仮眠を取る休憩時間を確保出来ていない。休憩室では「会話」や「食事」の目的での利用が多い。それ以外に「スタッフ専用スペース」「横になれるスペース」「患者や他人の視線が気にならない」が強く求められていた。救急センタースタッフは、他部門より休憩時間が短く、休憩が十分に取れていないと感じている。救急搬送が続く時はまとまった休憩時間を取れないことから、短い休憩時間の中でも身体を休められる環境整備は喫緊の課題であろう。救急病棟ではICUの現場の音がうるさく、空き病床で仮眠している事例もある。救急部門では患者状況を把握しやすい事などからスタッフスペースが現場近くに配置される事が多いが、音問題に注意する事は必要であろう。近年はオフィスでの快適性やリフレッシュの必要性などが労働生産性の視点で問われるようになってきた。病院は患者第一で計画されていることが多く、医療スタッフの視点を重点として計画された事例は少ない。患者視点で病院を計画することは、病院の役割や経営上最も重要である。
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