本研究は、人々の営み、地域概念を含み、そのあり様が多様な「文化的景観」の理解を進め、「営みの真実性」を次世代に送り届けるために、主に大阪府河内長野市の流谷集落を対象にし、以下の3点を明らかにした。 1)調査対象集落の文化的景観の景観構成要素は、面、線、点、無形に分類することができ、景観への関わりには土地に起因するもの、生活に起因するもの、信仰に起因するものに整理できることがわかった。また、集落の社会状況の変化に応じて、景観が変化してきた変遷を明らかにすることができた。 2)水系と土地利用の景観構成要素の関係に着目し、土地利用の変遷にともない水系の維持管理の仕組みが弱体化し、水系と維持管理の仕組みは重層的に関係していることを明らかにした。また、耕作地が転用される条件から、文化的景観のマネジメントに際して、水系とその維持管理の仕組みが単位となる可能性が示唆された。 3)集落景観の維持管理の担い手について、担い手1世帯あたり、約2.3人の集落外担い手が関わっており、集落外の担い手は他出子を含む血縁・地縁者が73%、定住者と血縁・地縁の関わりがない他所者が17%であることを明らかにした。人口減少社会への対応として、集落外住民による集落景観の維持管理への関わりを集落空間と対応づけて実証することができた。 以上から、文化的景観に対して働きかける際に、対象を理解する枠組みであり、働きかける枠組みとしての「空間的技法」と、働きかけをしようとする主体の意思である「計画的思考」が手がかりになることが示唆された。
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