研究課題/領域番号 |
15K06375
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
石井 敏 東北工業大学, 工学部, 教授 (90337197)
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研究分担者 |
孔 相権 山口大学, 創成科学研究科, 講師 (80514231)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 看取り / 特別養護老人ホーム / ユニット型 / 従来型 / 個室 / 静養室 / 霊安室 / 死亡退所 |
研究実績の概要 |
前年度に実施したアンケート調査結果を精査し、各種加算の申請状況と従来型・ユニット別型での施設内死亡の割合、また、看取りのプロセスにおける特に各室の利用の状況の具体について分析した。その結果、看護体制および夜間の職員配置の充実が施設における看取り実践につながっていることが示された。また、「従来型特養」では看取りのプロセスに応じて居室→静養室→霊安室という看取り時の流れを辿るケースが多いのに対して、「ユニット型特養」では基本的に居室が静養室や霊安室の役割も果たし、移動せずに連続的に個室居室で看取りが行われている状況が見えてきた。 以上の結果を受けて、具体的な看取り事例を通して、同プロセスの詳細(対応や室利用の実態)を確認する調査を行った。居室の状況がそのプロセスにおいて大きな影響を与えると考えられることから、「従来型」と「ユニット型」それぞれにおける看取りの実際を調査することとした。 調査は「看取り」を積極的に行っている施設に依頼し、訪問により過去の死亡退所者(特に施設内での看取り死亡事例)の状況をヒアリングすることで行った。あらかじめ各施設1~3事例の看取り事例の抽出を依頼し、入所から死亡退所までの一連の対応について、空間の利用のされ方や諸室の移動、看取りに関わる環境づくりなどについて確認した。4施設計10例についてデータを得ることができた。各事例について、そのプロセスの詳細を分析すると、「看取り」の判断は、「食事不良」がきっかけになることが多く、医師の診断のもと「看取り」に入ること、施設で「看取り」を行うか、病院に行くかは多くが家族の意思・判断に基づくこと、「看取り」の対応やその形は一様ではなく、個々人による違い、家族の対応の違い、そして施設の考え方や対応の違いによること、特に多床室での居室から静養室への移動の状況も明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒアリング調査は施設側の準備・負担が大きく調査依頼することができる施設抽出と選定に時間がかかったが、おおむね予定としていた調査が実施できた。論文投稿(日本建築学会論文集)については、データの整理に時間がかかり未実施となった。学会発表については年度内に2編投稿済だが、発表は次年度になる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査を通して、施設によっても、また事例によって多様な「看取り」の姿があることが明らかになった。「従来型」「ユニット型」とも、さらに多くの事例を収集しながら、看取りと空間との関わりについて探る必要がある。今後は引き続きヒアリング調査を継続し、事例数を確保することを行い、データとしての信頼性を高めることを目指す。また、これまで行ったアンケート調査とヒアリング調査の結果を踏まえて、施設計画に関わる整備指針(諸室のあり方)についても最終的には提言することを目指す。また成果の論文投稿(日本建築学会論文集)を果たす。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒアリング調査の訪問施設数が、当初予定よりも少なかったことによる。調査先の都合により次年度に延期したところもあり、結果として予定よりも使用額が少なかった。また、予定していた論文投稿が果たせなかったことにより残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度実施できなかった施設での調査に加えて、論文投稿を行うことで次年度(最終年度)内ですべて使用する予定である。
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