研究課題/領域番号 |
15K06378
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
志村 秀明 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (10333139)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 公共施設 / 再編 / 複合化 / 市民参加 / 合意形成 / 学校施設 / ワークショップ / デザインゲーム |
研究実績の概要 |
本研究は、自治体と市民との連携にもとづく公共施設再編の方法を開発することを主眼として、使い手である市民が知恵を出し合うことで、地域の実状に合致し、かつ市民の交流を促進するような公共施設再編のための市民合意形成手法を開発することを目的としている。研究方法は、実際に公共施設の再編を検討している自治体・市民との連携して社会実験を繰り返し行うことで、市民合意形成の手法を開発していく。市民合意形成の手法は、「公共施設再編デザインゲームの開発」「市民・自治体の連携方法の確立」「情報発信方法の確立」からなる。また、先駆的な取り組みを行っている国内外の自治体や市民の取り組みを把握する。平成28年度を中心とする研究実績は、以下のように整理できる。 1)公共施設再編デザインゲームの開発:さいたま市で継続して研究を行い、小学校を中心とする複合化基本設計案を策定するデザインゲームを実施、交流シーンカードの有用性を明らかにした。 2)公共施設再編のための市民・自治体の連携方法の確立:ドイツ・ミュンヘン市でのミニ・ミュンヘンという子どものまちづくり学習の取り組みを視察するなどした。ミニ・ミュンヘンは、NPOとミュンヘン市、州政府、民間企業の連携で実施されている。 3)市民合意形成のための情報発信方法の確立:さいたま市と市川市を主な対象として、PFI事業を用いる場合などでの市民への情報発信の実績・状況、また特にPFI事業での市民への情報発信や対話に関して課題があることを把握した。 4)公共施設再編に向けた取り組みの把握:公共施設の中で、最も数が多い学校施設における市民参加の方法について研究を進めた。昨年度までの全国調査を踏まえて、学校施設の再編・複合化を先駆的に進めている自治体に対して調査を行い、学校施設の適正規模・適正配置の検討を踏まえた市民参加の取り組みを把握した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、「公共施設再編デザインゲームの開発」「市民・自治体連携方法の確立」「情報発信方法の確立」の3点から、公共施設再編における市民合意形成手法を開発しようとしている。 まず公共施設再編デザインゲームの開発では、すでに研究代表者と自治体間で社会実験における信頼関係が形成されていたことから、さいたま市と市川市においてデザインゲームを段階的に実施できている。その結果を分析することで、「先進事例視察と再編対象施設視察ゲーム」「公共施設複合化イメージゲーム」「公共施設複合化計画ゲーム」「公共施設複合化デザインゲーム」の開発がほぼ完了している。平成28年度は、さいたま市で基本設計におけるデザインゲームを実施した。公共施設複合化では、自治体内の複数の所管が関係するため、「交流シーンカード」による市民からの意見を所管課職員が直接聞ける場を設けることの重要性を明らかにした。 市民・自治体連携方法の確立では、ミニ・ミュンヘンの取り組みを調査することによって、市民の地力を強化するための、自治体とNPOといった市民取り組みの重要性を把握した。また、さいたま市での一連のデザインゲームの実施よって、公共施設再編の取り組みを、都市マスタープランとの連携や、地区まちづくり協議会の取り組みと連携させることを提案し実現している。 情報発信方法の確立では、さいたま市や市川市において、デザインゲームの取り組みをウェブサイトに情報公開することで、社会実験的に方法を確立してきている。平成28年度は、特に民間企業の資金を用いるPFI事業における情報公開の状況を把握した。全国の自治体では、大規模なPFI事業における市民合意形成で問題が発生している事例があることも把握した。 全国的な公共施設再編の取り組みの調査はほぼ完了しているが、継続して調査を行う必要も残っている。
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今後の研究の推進方策 |
「公共施設再編デザインゲームの開発」については、ほぼ開発を完了しているが、さいたま市を対象として、実施設計段階におけるデザインゲームを実験的に実施して、最終的に合意形成手法の開発を完了させる。 「市民・自治体連携方法の確立」については、先駆的な取り組みを行っている国内の自治体の連携体制について調査する。平成28年度までに調査を完了させる予定が少々遅れているため、今年度は確実に自治体を訪問してヒアリング調査まで完了させる。主な調査対象は、上士幌町、室蘭市、岩手県紫波町、松江市、佐賀県武雄市などである。また、NPOと民間企業までを含めた連携事例の調査を海外の先進事例を対象として実施する。調査候補として、米国ソルトレイクシティのオリンピック施設の利用と、公共施設の集約化の取り組みがある。また欧州自治体の取り組みも調査候補として検討している。 「情報発信方法の確立」においても、やはり国内の先進自治体を対象として調査を実施する。地方自治体では、武雄市、愛知県西尾市などが調査候補である。また、さいたま市と市川市においても継続して、公共施設再編の取り組みをウェブサイトなどで情報発信し成果を確認する。さいたま市では、特に与野本町小学校を核とする公共施設複合化の実施設計が完了する予定であるため、その情報発信は先駆的な取り組みとなる。 「公共施設再編における市民合意形成手法の開発」の研究成果は、すでに学会や専門誌で発表しているが、集大成としてまとめたものを更に発表する。「公共施設再編デザインゲームの開発」については、ほぼ研究を完了しているため、すでに査読論文としてまとめ学会に提出して審査を受けているものがある。今後は、「市民・自治体連携方法の確立」「情報発信方法の確立」についても査読論文として編纂する、または専門誌で成果を発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度末に、いくつかの地方自治体へのヒアリング調査を実施する予定であったが、年度末の煩雑期であったため、自体地担当者との日程調整がつかず調査を実施できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度にヒアリング調査を実施する予定であった地方自治体への出張費として使用する予定である。
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