研究課題
法制度の変遷の実証的研究として、主に新都市計画法制定(1968)時以降の都市・建築規制制度を対象とし、以下の視点で調査研究を進めてきた。①制度導入の意図に立ち戻り、制度の導入時と現在の社会的背景や議論の前提(市街地像・建築技術等)の相違を確認する、②今日における「評価」「課題」を整理(市街地像)し、③制度の性格が意図から変質、時代と乖離してきたプロセスを追跡する、④そのうえで新たな法制度のあり方を検討する。具体的には、総合設計制度(1970)、日影規制(1976)、地区計画(1980)を対象とし、各規制制度の創設・改正の社会的背景と意図、運用指針や基準の設定等を検証し、その後の変容と市町村等における運用実態を明らかにした。今年度は、地区計画制度を対象とし、制度設計の経緯及び運用実態と課題を整理した。これらの中で、以下の点が浮き彫りとなった。①国の制度設計段階における都市計画(都市局)と建築規制制度(住宅局)等の守備範囲等をめぐる調整、②国の制度設計意図(市町村の主体性・裁量性の想定)と地方公共団体の運用実態(住環境の総合性の担保)との関係、③制度化段階における私権制限と公共性(法制局)の解釈など、である。とくに現行制度を活用、運用する地方自治体との関係という側面では、①国の制度設計では、時代的経過の中で、画一的一律的な制度設定から、多様な制度手法を整え、地方自治体レベルでの都市構造や市街地特性に応じた運用や市街地環境を担保する総合的な活用を期待するという流れがある。そして、各種制度の総合的な活用については、都道府県・市町村の主体性・裁量性を想定している。②一方、地方自治体の中には、都市像や市街地特性を踏まえ、とくに住環境の総合性の担保との関係で独自の理念により、各種制度の抱き合わせも含め、総合的な戦略で活用・運用している事例も確認された。
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都市計画論文集
巻: 52 ページ: 624-631
https://doi.org/10.11361/journalcpij.52.624
巻: 52 ページ: 632-639
https://doi.org/10.11361/journalcpij.52.632