本研究は、日本、中国、韓国の3か国をフィールドに、バリアフリー環境整備に対して障害者をはじめとするユーザー参加がどの様に行われてきたかについての比較研究である。これまでの研究成果では、当然ではあるが各国により参加の形態や歴史が異なる。本研究でもその違いや各国の特徴を捉え、市民・ユーザー参加の状況とバリアフリーの実現プロセスを考察してきた。特に北京市、ソウル市を中心に現地調査を繰り返した。 2018年度は延長研究期間の1年であった。2018年度は、これまでの研究実績のとりまとめと、ユーザー参加が法制度的に進み始めている韓国ソウル市で現地調査を行い、法改正に関わる関連文献の整理を行った。日本ではここ数年間におけるバリアフリー法改正の動きとその法改正の柱の一つである障害者を中心としたユーザー参加の実態を捉えた。 ユーザー参加は、今日ではユニバーサルデザインの考え方の浸透により、障害当事者中心とはいえないが、バリアフリーにかかわるユーザー参加の基本は、変わらずに多様な障害者への対応であるとみている。2015年の韓国バリアフリー法も障害者に関わらず、高齢者、女性、妊産婦などを明確に法対象として位置付けてはいるものの、法運用面でのユーザー参加は障害者団体を明確に規定している。本研究の成果により、我が国のバリアフリー法制度へのユーザー参加の新たなしくみ開発に繋がる取りまとめを行う予定である。またもう一つの研究成果として、中韓両国においてはバリアフリー政策が日本より少し遅れて登場したかのように受け取られがちではあるが、制度的には日本よりも先進的な部分もある。本研究の成果によりユーザー参加によるバリアフリーの都市開発、インフラ整備の有益な経験交流がさらに進められていくように努力したい。
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