研究課題/領域番号 |
15K06394
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小澤 丈夫 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20399984)
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研究分担者 |
角 哲 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90455105)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 都市空間デザイン / 都市景観デザイン / 建築デザイン / 都市形成 / 再開発 / 地方自治 / チューリッヒ / バーゼル |
研究実績の概要 |
本研究は、地方自治体主導による優れた都市空間づくりを、先導的に実践するスイスのチューリッヒ市とバーゼル市に着目し、戦後都市形成の歴史を踏まえつつ、どのような職能をもった人材が、どのような体制と手法を用い、都市空間デザインを実践してきたかについて、3年にわたる調査研究によって明らかにするものである。研究初年度は、当初計画通り、a)都市計画行政の理念・主要法体系・組織構成の特徴、b)都市空間デザイン実践の具体例、c) 20世紀以降の市街地形成過程と都市空間の現状、について、基礎資料の検索と収集、関係者へのヒアリング調査を実施し、概ね以下の成果を得た。 1)両市おける都市空間デザインのツールである Gestaltungsplanについて、担当部署の助言に沿って、ウェブサイトに公開されている資料を入手し整理した。これによって、これまでに実施された Gestaltungsplan の概要を把握することができた。さらに、市街地、住宅地、再開発地域など立地毎に、代表的な事例を各1件抽出し現地視察を行った。これにより、Gestaltungsplan が、具体的にどのように実施されたかについて確認作業を行った。 2)両市担当部署、スイス建築と都市計画に関する近現代史を専門とする歴史家と批評家、都市計画行政の支援実績をもつ建築設計事務所にヒアリングを行い、戦後、どのような考え方と手法で、都市計画行政が行われてきたかについて概観するための基礎的知見を得た。 3)スイス連邦工科大学アーカイヴ、チューリッヒ市アーカイヴ、同市立図書館を訪れ、チューリッヒ市の形成過程に関する閲覧可能な史料の検索と収集を行った。また、スイス連邦工科大学において関連書籍を購入した。バーゼル市担当部署からは、Gestaltungsplan の運用に関する特定事例を紹介した冊子を入手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チューリッヒ市とバーゼル市における、現時点で収集可能な全 Gestaltungsplan の収集及び所在地の地図上へのプロット作業を完了し、加えて当初予定していた両市における現地調査とヒアリングをほぼ実施できたため、「おおむね順調に進展している」とした。現地渡航調査では、代表者のみによる第1回目調査、分担者と研究員(代表者大学研究室博士課程を修了しスイス連邦工科大学への在外研究経験のある研究員)各1名を帯同した計3名による第2回目調査を行った。両市の Gestaltungspan についての公開資料の収集と整理、地図上へのプロット作業については、代表者大学研究室において研究協力者の補助を得てほぼ完了した。チューリッヒ市の都市形成過程を知るための史料については、入手可能な地図や文献の複写、書籍の購入と共に、関連史料の所在について大まかに把握し、次年度調査につなげる下地をつくることができた。 また、本研究の着想のきっかけならびに準備の役割を担った代表者らによる先行研究「チューリッヒ市が運営する建築賞による建築評価手法」について、本研究の視座を加味することによって内容を発展させ、3編の論文として新たに公表した(日本建築学会計画系論文集)。これらは、本研究の成果の一部となるものである。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目となる平成28年度おいても、概ね計画通りに調査を実施する予定である。まず、都市の形成過程については、前年度収集したチューリッヒ市の史料をさらに補完し分析すると共に、チューリッヒ市に比べ、やや収集数が少ないバーゼル市における史料収集と分析を積極的に行う。併行して、前年度同様に、両市における Gestaltungsplan 運用の考え方と手法についての調査を引き続き行う。特に、都市計画行政への支援を行ってきた建築設計事務所へのヒアリングと、対象敷地の現況調査によって、両市における Gestaltungsplan の具体的な内容と手法、都市形成過程との関係や背景について重点的に分析と考察を行う。これによって、両市の都市空間デザインの考え方と手法について、より包括的かつ多面的に理解することができると考える。今年度の現地調査においては、代表者ならびに分担者に加え、代表者が運営する大学研究室所属の学生3名を帯同する予定である。調査にあたっては、平成27年度同様に、両市の担当部署、スイス連邦工科大学研究者、チューリッヒ市において多数の Gestaltungsplan、ならびにその前段階の検討手法である Testplannung の作成に関わった建築設計事務所らの協力を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者による平成27年度第1回目渡航について、他の教育事業目的によるイタリア渡航と組み合わせることによって、本財源からの支出を片道分のみとし節約を図った。これは、次年度の現地調査を充実させることを意図したことによる。一方、スイス連邦工科大学において、本研究の資料となる購入可能な専門書籍が予想以上にあったため、それらの購入に当初計画以上の支出を要した。最終的に、両者の差額を次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度において、計画事例の現地調査を充実させるため、補助員の増員ならびに滞在日数の延長のための経費にあてる。
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