2015年度~2017年度の研究期間において、「再利用の観点による西洋建築史学の再構築」に関する研究は『時がつくる建築:リノベーションの西洋建築史』(東京大学出版会、2017年)の出版によって一通りの完結を見たので、最終年度となる2018年度においては、本研究課題のもう一つの柱であった「構築の観点による西洋建築史学の再構築」の研究をさらに発展させた。 「構築」の観点に関する本研究成果は、もうひとつの「物質性(マテリアリティ)」の観点とともに、2018年4月より隔月連載論文というかたちで「10+1 website」にて発表してきた。本連載論文の全体のタイトルは「アーキテクトニックな建築論を目指して」というものであり、従来の観念的建築論ではなく構築術的(architectonic)な建築理論の構築を目指している。また連載論文全体を通じて着目しているのは、「素材と構築」の問題であり、この観点は連載第1回目の論文「素材と建築が紡ぐ建築史」に直接的に表れている。 2018年度にはこの連載で全6編の論文を発表しており、2019年度にも引き続き6編の論文を発表する予定である。またこの「素材と構築」の問題は、現代の建築理論を歴史的に論じる上できわめて重要なテーマであることがあきらかになり、このことが次の研究テーマ「構築と物質性に基づく西洋建築史・建築意匠論の再構築のための方法論的研究」(科学研究費補助金・基盤研究B、2019-2022年度)へと発展した。 また以上とは別に、2015年度~2017年度の研究成果である「再利用と時間」の問題についても、9編の口頭発表、4編の論文を発表した。
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