研究課題/領域番号 |
15K06397
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
大田 省一 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 准教授 (60343117)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 開港地 / サーベイヤー / 横浜 / 擬洋風建築 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本に渡ってきた開港期建築技術者の経歴を調査することで、近代化の黎明期における西洋建築技術の導入過程を再考察することを目的としている。本年度は、これまでの研究成果の総括及び今後の課題の確認のため、日本国内での調査研究を実施した。横浜開港資料館、神戸市立博物館、下田開国博物館、下田郷土資料館等での既往研究の補足調査や、開港期・初期近代建築研究者との研究協議を行った。また、我が国への西洋建築技術の導入過程の調査として、米国から日本に渡った建築技術者の足跡を追うための史料調査を、サンフランシスコ公共図書館、カリフォルニア州立大学バークレー校等において実施した。 本年度は、米国からの初期開港期建築の影響を重点的に調査し、下田の開港期における西洋建築空間の導入及び現地の対応として了仙寺、玉泉寺等の米国接遇空間の調査を行った。また都市空間の西洋化の中で普及する耐火建築としてのなまこ壁が、本来の左官仕事による蔵造りから簡便なものに変化したこと、及びその契機が下田での安政東海地震(1854年)からの復興による大量の再建建築にあること、さらにこれが横浜へと導入された可能性について指摘した。 米国の調査では、新橋・横浜の停車場を設計するなど開港期の西洋建築導入において大きな役割を果たしたリチャード・ブリジェンスのカリフォルニアにおける事跡を明らかにした。彼が建築技術者として参画したフォート・ポイントや測量技師・リソグラフ作家として活動したこと、及びその作品について現地調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定の国内調査および研究協議は予定通り実施できた。米国での調査研究も、現地研究協力者との共同により予定通り実施できた。平成28年度予定のフランス・イギリスでの調査のための国内予備調査も実施した。
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今後の研究の推進方策 |
ヨーロッパ、アメリカからの技術導入をアジアの視点から位置づけ、西洋近代建築技術の導入過程を再考察する、という研究目的に則り、引き続き調査研究を遂行する。本年度はアメリカから国内開港地への建築技術の導入及び現地側の対応を主軸として研究を行ったが、アメリカの西部開拓期の東海岸から西海岸への建築技術の導入との関係について、さらに研究を進める。また、イギリス・フランスからの建築技術の導入について、本年度の予備調査に基づき研究を展開する。
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