本研究課題で主として調査対象とした開港期の建築関係技術者の動向について、本年度はロンドンでは大英図書館、イギリス国立公文書館、パリではパリ建築都市研究所において史料調査を行い、開港期横浜の地図や駐在官レポート等を入手した。またパリでは国立高等研究院のパスカル・ボルドー氏と研究協議を行い、フランスにおける関連研究の状況について平リングを行った。 本課題の調査の中で、日本の開港期建築技術者の足跡を探るには、近隣アジア諸国の事例を探る必要が生じ、中国、カンボジア、インド等で調査を行った。横浜駐屯のフランス軍のカンボジアにおける建設事例、天津のフランス軍兵舎、コルカタの鉄橋、鉄道施設等の現地調査を実施し、ヨーロッパから日本への技術伝播の中間事例として、成果をまとめている。特にインドシナでは、横浜駐屯フランス軍が経由地としているため重要な関連が見出された。カンボジアの地方庁舎、ベトナムの海運会社などは、植民地化初期の建設事例であり、現地構法の取り入れ方に横浜と共通した点が多々みられ、建設時期も1860年代とほぼ同時期であることを明らかにした。この時期のフランス本国の海外進出事情と併せて、さらなる調査研究が必要である。 今年度は当該科研の最終年度でもあるため、成果発表については、日本建築学会大会においてフランス海軍病院図面等に関する報告、都市史学会ではブリジェンス等の開港期建築技術者の足跡に関する報告を行うなど、研究成果の開陳に努めた。
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