研究課題/領域番号 |
15K06400
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研究機関 | 長岡造形大学 |
研究代表者 |
平山 育男 長岡造形大学, 造形学部, 教授 (50208857)
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研究分担者 |
藤川 昌樹 筑波大学, システム情報系, 教授 (90228974)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 和釘 / 洋釘 / 併用 |
研究実績の概要 |
本年度は、建築調査と資料調査を並行して進めた。 建築調査では、継続的に和歌山県橋本市中心市街地を中心に、近代から近世における民家を中心に建築調査を進めており、調査結果はいずれも日本建築学会に報告している。 現地調査の内、和釘と洋釘の併用を確認している明治17(1884)年建築の橋本市みそや呉服店別館店舗兼主屋における調査では、和釘と洋釘の使用について平面図上に使用状況を落とし込み、使用状况の確認を行った。また、建築調査では橋本市古佐田梶川印刷工場兼主屋、橋本市古佐田中前家住宅主屋、離れ座敷の建築を実施した。梶川印刷工場兼主屋は昭和6(1931)年の建築とされ、建築と変遷の過程を明らかとした。中前家住宅は主屋が昭和時代戦前期、離れ座敷は昭和36(1961)年の建築であることが幣串の記載から明らかとなった。離れ座敷は建物では合板の使用が目立つものの、漆喰壁下地は小舞掻きとするなどの点に、時代の特性を見ることができる。また、和歌山市山本家住宅主屋の建築調査を実施した。山本家住宅主屋は食い違い型四ッ間取りの平面をもつ農家で、編年及び建築の仕様からみると、建物では和釘がも散られず、木材には機械製材の痕跡がなかった。また、小屋裏からは無記名ながら長さ4.3尺程の竹製の幣串の発見などから明治時代末頃の建築と見ることができたが、聞き取りでは昭和初期時代の建築とされた。 資料調査においては、釘の値段について中世から近世におけるものを通時的に追い、物価との関係でその変遷を考察している。資料調査を進めることにより、釘の値段だけではなく、和釘では種類、数詞も考察の対象となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度は年度途中での採用で研究の開始が遅れたが、昨年度は年度初めからの研究となり、建築調査及び資料調査とも順調に開始することができた。 建築調査では、近代における民家建築に建物の調査を実施し、周辺地域における比較調査も実施できた点が有効であった。 資料調査では、新聞情報なども含め広く近代における釘の値段について情報を集めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
建築調査においては、和歌山県橋本市中心市街地を始め、周辺地域のおける比較調査も進め多角的な視点からの調査考察を試みる。 資料調査においては、近世から近代のものにまで資料の考察を広め、和釘と洋釘の値段の変遷を実証的に明らかにすることを最終的な目的とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は順調に、補助金の使用を行ったが、初年度における科研費決定の遅れが大きく影響して、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、建築調査及び資料調査も早い段階から始め、初年度に行えなかったかった調査を実施し、最終的な成果としてまとめたい。
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