2017年度に調査研究を完了する予定であったが、補足を予定していた対象地域である台湾・花蓮で地震が発生したことがあり、研究期間を1年間延長した。本年度は、台湾において、とくに日本統治期に新たに都市が建設された高雄および基隆と花蓮について調査を実施している。 ①高雄・基隆については、港湾都市という都市類型に注目しながら、これまでに調査した中国・南満州の租借地である大連と近代都市形成過程と比較しながら、その港湾機能および港湾都市としての検討を行った。②花蓮もまた日本統治期の都市建設によって誕生した港湾都市の典型であり、日本的な都市空間=社会構造を反映していると考えられる。現地で入手できた詳細な都市地図をもとに街区・街路形態および地割・建物携帯に関する分析を行うことで、両側町や短冊形地割という日本的空間=社会構造をもつ都市組織の継承性について検討した。③花蓮は、吉野村をはじめ大規模な開拓農村が建設された地域であり、都市と農村の関係性が注目される。相互に関係づけられた都市計画および農村計画の内容、都市・農村が一体化した地域空間の生成過程について検討した。④台湾については、戦前期の『火災保険特殊地図』が刊行されたため、同図をもとにこれまでの調査研究都市に分析を加えた。 以上を踏まえて、4か年に亘る調査研究を総括しながら東アジアの近代都市空間の生成過程における日本的社会=空間構造の影響について検討している。
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