研究課題/領域番号 |
15K06408
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
海老澤 模奈人 東京工芸大学, 工学部, 教授 (40410039)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 近代建築史 / ドイツ / モダニズム / ジードルンク / 集合住宅 / 住宅史 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、 1.ヴァイマール期ドイツで建設されたジードルンク(住宅団地)の主要な事例を、構造・構法・材料・設備・平面計画・建築表現などの諸点から比較分析し、その建築に見られる普遍的・国際的な性格と地域的な多様性との両面を明らかにすること 2.さらに、同時期ドイツと影響関係をもった周辺国の住宅計画を比較対象に加え、その特徴を分析することで、モダニズム住宅の国際性と地域性の一端を明らかにすること 3.以上の考察を通してモダニズム住宅の多様な側面を検討し、その意義を再評価することである。 2年目にあたる平成28年度は、当初計画通り、1.と並行して、2.にも取り組んだ。日本において資料の収集と読み込みを進め、夏期に約2週間の現地調査を実施した。現地調査では、最初、ドイツとの比較対象国であるベルギー(ブリュッセル)、フランス(パリ、ボルドー近郊ペサック、マルセイユ)、スイス(チューリヒ)を訪問し、ジードルンクおよび近代住宅の視察を行い、資料収集も進めた。続いてドイツに移り、当該年度の中心テーマであるシュトゥットガルトのヴァイセンホーフ・ジードルンクの調査と資料収集を行った。シュトゥットガルト市史料館とチューリヒ工科大学建築史料室ではこのジードルンクに関する一次資料を得ることができた。最後にミュンヘンの図書館で補足の資料収集を行った。これら現地調査の成果をもとに、調査後は資料の読み込みや翻訳、およびヴァイマール期ドイツのジードルンクの総合的な比較に取り組んだ。 本研究テーマと関連する当該年度の具体的な成果としては、ケーススタディの一つとして、ライプツィヒのジードルンク・ルントリンクに関する口頭発表を平成28年8月の日本建築学会大会で行った。さらに、1.の成果として、ヴァイマール期ドイツのジードルンクの共用施設(洗濯棟)に関する研究を本年7月に口頭発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究においてヴァイマール期ドイツに建設された主要なジードルンクの訪問調査および資料収集がおおむね完了しており、ジードルンク建設の全般的な傾向が把握できる状態になっている。今後も個別の事例に関するケーススタディを継続するとともに、包括的な考察を進め、ヴァイマール期ジードルンクの全体像の提示にさらに近づけていきたい。また、本研究テーマのもうひとつの課題である「同時期ドイツと影響関係をもった周辺国の住宅計画との比較」についても、平成28年度はベルギー、フランス、スイスという近隣国の事例を視察し、新たな知見を得ることができた。さらに1920年代のモダニズム住宅の国際的な舞台となったシュトゥットガルトのヴァイセンホーフ・ジードルンクについて、現地での建築調査と資料収集を進めることができた。引き続き周辺国の事例調査を行うことで、ヴァイマール期ドイツの住宅計画の相対的な把握を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度である平成29年度も引き続き、当初計画通り、1.ヴァイマール期ドイツのジードルンクの比較分析、および 2.ドイツと周辺国のモダニズム住宅の比較分析の両面から調査・考察を進めていく。2.については、平成29年度の主テーマである、1929年フランクフルトの「第2回CIAM会議」およびそこで開催された展覧会「生活最小限住居」の調査・考察に取り組む予定である。この会議もヴァイセンホーフ・ジードルンクと同じく、ドイツが近代住宅の提案のための国際的な舞台となった歴史的出来事であるが、とくに前記の展覧会についてはまとまった研究が少ない。ゆえに本研究では、モダニズム住宅の国際性・地域性という視点からその考察を試みたい。 研究資料の収集および建築の視察のために、夏期に約2週間の現地調査を実施する予定である。フランクフルトでは、エルンスト・マイ協会などの関係機関で助言を得るとともに、資料収集を進めたい。またこの夏期調査では、未訪問のドイツの主要な近代住宅を視察するとともに、モダニズム住宅の国際比較のために、イギリスなど他国の事例も可能な限り視察する予定である。さらに、包括的な資料収集が可能なベルリンもしくはミュンヘンの大規模図書館で、ヴァイマール期ジードルンクに関する補足的な資料の収集も行いたい。以上の現地調査の成果に考察を加え、年度末もしくは次年度初めを目途に学術的な成果として発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度はほぼ当初計画通りに予算を使用したため、平成27年度の未使用額とほぼ同額が平成28年度も残される形になった。この金額を次年度使用額とした理由は、最終年度である次年度(平成29年度)において資料収集費の増額が見込まれると考えたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度も、現地調査のための旅費、図書購入費、資料収集に必要な諸経費(文献複写費、資料郵送費など)を中心に研究費を使用する計画である。前年度までの未使用額は、主に図書購入費、資料収集費として使用し、必要に応じて国内旅費等にも充てる。
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