研究課題/領域番号 |
15K06410
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
山崎 幹泰 金沢工業大学, 環境・建築学部, 准教授 (10329089)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 霊廟 / 御霊屋 / 近世社寺 / 大名家墓所 |
研究実績の概要 |
本研究は、加賀藩に関係する霊廟建築(御霊屋)を対象として、現存遺構の実測調査と図面史料による復原的研究と、御霊屋に関する文献の解読、分析、加賀藩墓所との関係や、徳川家の東照宮関係の霊廟建築との比較を通じて、加賀藩における霊廟建築の建築的特徴と歴史的な位置づけを明らかにすることを目的としている。 平成27年度は、調査対象となる遺構の準備調査を行い、一部の建物について実測調査を実施した。加賀藩関係の遺構として、大乗寺御霊堂(本多家霊屋)(石川)、芳春院前田家霊屋(京都)について実測調査を行って平面図、配置図などを作成し、高野山前田家墓所(和歌山)について写真撮影による準備調査を行った。また、比較対象として徳川将軍家や大名家ほかの霊廟建築や墓所について準備調査を行った。対象は以下の通り。徳川家関係として、旧台徳院霊廟惣門(東京)、増上寺台徳院殿霊廟模型および徳川将軍家墓所(東京)、常憲院霊廟勅額門(東京)、厳有院霊廟勅額門(東京)、高野山徳川家霊台(和歌山)、旧自証院霊屋(東京)。大名家ほかの霊廟建築として細川家霊廟・妙解寺跡・泰勝寺跡(熊本)、高台寺霊屋(京都)、松平秀康及び同母霊屋(和歌山)、佐竹義重霊屋(和歌山)、上杉謙信霊屋(和歌山)、瑞巌寺陽徳院御霊屋(宮城)、瑞鳳殿霊屋(宮城)。 また、御霊屋に関する資料調査として、金沢市立玉川図書館近世史料館において、天徳院御霊屋、大乗寺御霊堂、芳春院前田家霊屋に関する古図や絵画などの閲覧と撮影を行った。実測調査と資料調査に基づき、大乗寺御霊堂は建築年代を19世紀前半の文政~弘化頃に絞り込むことができ、また古い壁紙の発見によりかつての装飾の一部を明らかにした。芳春院前田家霊屋について、瑞龍院霊屋と芳春院霊屋の寸法、仕様、装飾などの比較ができ、改築箇所を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加賀藩関係の御霊屋について、28年度に予定していた実測調査の内、大乗寺御霊屋、芳春院前田家霊屋の調査が先行して実施できた一方で、比較対象となる徳川家や各地の大名家の霊廟建築の準備調査については、部分的な調査にとどまった。大乗寺御霊屋の実測調査においては、平面図、立面図、断面図の作成、建築年代の推定と建設経緯、建築装飾の復原考察、絵画資料との比較考察を実施。芳春院前田家霊屋の調査においても、平面図、配置図の作成、詳細な仕様調査を実施した。比較対象の調査は、国宝、重要文化財の霊廟建築をリスト化し準備調査に着手したものの、県市町村指定の文化財や史跡、さらに霊廟との関係が深い墓所の調査も必要であることが明らかになってきたため、未だ調査範囲の全体像の把握に至っていない。加賀藩関係の調査についても、支藩である富山藩、大聖寺藩などの遺構と資料の調査、現存しない遺構についての調査が、未だ不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の目的は霊廟建築のみを対象としていたが、他藩の霊廟建築との比較や大名家墓所の研究などを参考にすることにより、加賀藩の位牌堂としての霊廟建築の特殊性の分析や、霊廟と墓所との関係についても調査が必要なことが明らかになってきた。そこで、東照宮など徳川家関係の霊廟のみならず、他藩の大名の霊廟建築とその墓所について、調査と比較分析をより進めていく必要がある。そこで今後は、1)おもに金沢市以外の加賀藩関係の霊廟建築・墓所の詳細調査、2)東照宮など徳川家関係の霊廟建築・墓所の調査、3)他藩の大名の霊廟建築とその墓所の調査、の三点について、並行して調査を実施する。1)について28年度は富山、大聖寺など加賀藩の支藩について調査を行う。2)は27年度に引き続き準備調査を進め、主に建築装飾を分析の対象とする。3)は上述の通りで、主に墓所と霊廟との関係性について、各地の大名家の霊廟建築と墓所を、調査分析の対象とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用額は当初のほぼ計画通りであり、物品費、国内旅費、謝金などとして使用し、研究を遂行した。次年度使用額は、少額のため使用できなかった残金である。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度においても、当初の研究計画にそって、物品費、国内旅費、謝金などとして、経費を使用して研究を遂行する予定であり、次年度使用額はその一部に当てる。次年度使用額が少額であることから、使用計画について変更はない。
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