研究課題/領域番号 |
15K06414
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
山根 周 関西学院大学, 総合政策学部, 准教授 (40285242)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 東南アジア / インド / 移民 / 都市形成 / マレーシア / ペナン / イポー / シンガポール |
研究実績の概要 |
本研究は、東南アジアの都市におけるインド系移民の居住地に着目し、都市、建築、住居に見られる空間的特質と、形成プロセスを明らかにすることを目的とし、28年度は、マレーシアおよび英国、シンガポールにおける臨地調査を行った。 マレーシアでは、イポーでの重点的フィールド調査を実施し、キンタ川右岸の旧市街地区において、施設分布、建築物の様式や構造、建物用途分布、コミュニティ分布、業種分布に関する悉皆的調査をおこなった。インド系住民と華人の居住地区が明確に分かれていることが確認できたほか、リトルインディア地区においてシク教徒の居住割合が高いことなどが確認できた。またマレーシア測量地図局(JEPUM)ペナン事務所において、1890年代に作成されたジョージタウンの地図(通称Kelly Maps)の収集をおこない、ジョージタウン全域をカバーする、130枚からなる縮尺1/480の詳細な地図シートを収集した。分析作業はこれからであるが、フィールド調査の結果との比較から、都市構成の変容過程を実証的に明らかにできることが期待される。 英国では、大英図書館および国立公文書館での資料収集調査を実施し、研究対象都市における都市形成の変遷を明らかにするため、ペナン、マラッカ、クアラルンプール、イポー、シンガポール等の19世紀~20世紀前半に作成された地図資料を多数収集した。 シンガポールでは、国立図書館およびシンガポール国立大学図書館において、東南アジアにおけるインド系移民の歴史的変遷やコミュニティ構成等の基礎資料である文献資料や、シンガポールの都市形成を知る手がかりとなる19世紀~20世紀初頭の地図資料等を収集した。またリトルインディア地区において、インド系宗教施設を主とした施設分布に関するフィールド調査を実施し、ヒンドゥー教とイスラームの宗教施設が大まかに分かれて分布する実態を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨地調査において、イポー、シンガポールなど重点的調査を実施する都市では、調査地区での悉皆的フィールド調査を行っているため、当初計画の予想以上に時間を要している。また、都市形成の変遷に関する分析のために、地図資料や文献資料の広範な収集が必要となり、対象都市に関する豊富な資料の蓄積がある英国やシンガポールの図書館、公文書館での資料収集調査を実施したことで、マレーシア、シンガポール以外の研究対象地域(インドネシア、タイ、ミャンマー、中国)における調査分析作業が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
東南アジアの中でインド系移民の人口割合が高いマレーシアおよびシンガポールにおける重点的調査を継続し、各都市の調査分析結果の比較から、共通点や差異について考察し、マレーシア、シンガポールにおけるインド系移民の都市形成の特質を明らかにする。 当初の計画で調査対象地域に含めていたインドネシア、タイ、ミャンマー、中国の諸都市に関しては、主として文献資料に基づきインド系コミュニティの構成等に関する知見を整理し、マレーシア、シンガポールと比較することにより、東南アジアにおけるインド系移民の都市形成に関する全体的な特徴について把握したい。
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